山辺田遺跡の出土品(31)

当ホームページの新着情報でもお知らせしていますが、役所内の事務手続きも完了し、ようやく山辺田遺跡の発掘調査報告書を刊行することができました。平成4年度に工事の際に出土した遺物から、平成10年度の遺跡としての登録に至った緊急発掘調査、平成25~27年度の3回の学術調査まで、これまでの調査成果をすべて網羅しています。A4版、オールカラーの160頁で、本シリーズでもほとんど毎回使っていますが、図と写真を合わせて、約600点の遺物を掲載しています。
ということで、本日ご紹介するのは、色絵磁器の中でも白磁を素地とする五彩手の大皿片です。その中でも、前回はほとんど伝世しないタイプをいくつか紹介しましたが、今回は伝世するタイプです。

写真1と図1は、出土した場所は70mほども離れていますが、内面にはほぼ同じような梅樹文が描かれています。両方ともに底部の破片で、図1の方はほぼ上絵が剥落し写真では写らないため図にしてみました。
写真1では、梅の花を黄色、枝を紫、枝の横に丸く描かれる蕾を緑の上絵具で塗っており、輪郭線の黒を除けば3色が使われています。この3色の組み合わせは、伝世するタイプには最も一般的なもので、伝世しないタイプには多い赤は使われません。

また、図1の外底面には、二重方形枠内に「福」字が配され、その上から銘を上絵具で塗り潰しています。写真1もよく見ると同じ銘が残っており、その上に緑絵具が塗られています。これらは両方とも、「福」字の偏(へん)の部分が欠けて残っていませんが、写真2の伝世品と同じ種類の銘です。

特徴は、「福」の旁(つくり)の「口」字部分の右側の縦線を斜め左方向に引いて、下線は右側の方形枠に接するように長く延ばすこと、また、下の「田」字部分の右線と下線を省略して方形枠線で代用していることなどです。
こうした「福」銘の製品は、白磁を素地とする五彩手と、高台内を白く残すタイプの青手にのみに見られ、染付を伴う素地の例などは知られていません。なお、これは山辺田の窯場だけで使われた銘と推測されるため、伝世品などを識別する際にも大きなヒントになります。

ちなみに、今回の出土品には残っていませんが、外面胴部には、通常、定型化した花唐草文が巡らされています。この花唐草文は、茎は緑の上絵具で塗られ、花の部分は黄色か紫が定番です。(村)H29.5.12

写真1a_1 写真1b_1
写真1a   色絵梅樹文大皿 写真1b
写真2_1 図1_1

写真2 「福」字の高台銘(伝世品)

 

 

 

図1 色絵梅樹文大皿

 

問い合わせ

文化財課 歴史民俗資料館
〒844-0001 佐賀県西松浦郡有田町泉山一丁目4番1号
電話:0955-43-2678 ファックス:0955-43-4185

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