文部科学大臣賞
彩陶扁壷 (サイトウヘンコ) 【石原 祥嗣】福岡県
人間が造り出した数々の遺産に共感し、長い時を経て変化してゆくうつろいの美しさの一瞬の今をとらえた表現。
2 位・佐賀県知事賞
颪 (オロシ) 【木野 智史】京都府
空間に余韻を残す造形をテーマに制作。プロセスの中で磁器轆轤での造形が現在最も自分に適していてテクスチャーを消す作業や土の塊が薄くなる形に轆轤という技法或いは道具が相応しいと感じる。素材と技法との関係を織り交ぜながら独創性のある空間を作りたい。
3 位・有田町長賞
SILENTE (シレンテ) 【レオナルド・バルトリーニ】熊本県
タタラをはり合せ成形し、乾燥後、テラシジラータを表面にぬり重ねていく。1050℃本焼をした。SILENTEとは、静かな場所という意味で音もなく過ぎ去る時間の流れを表現した。
佐賀県陶芸協会賞
Rin (リン) 【畑石 修嗣】佐賀県
器の取り巻く空間がどのように矛盾のある空気感を在するかが作品を作る上でのコンセプトであり興味である。素朴さの裏に計略された激しい動きがある妙嬉庵待庵のような空間のように。
朝日新聞社賞
立 (リツ) 【小牧 昭夫】三重県
乾き気味(程度はいろいろ)の土を内側から強い力で拡張すると表面に美的で、力強い流破文様が現われます。ここに左の作品には「ひいろ」を、右の作品には「呉須」を充填してから泥を成形した台上にセット、焼き上げます。泥乾法と称して突きつめております。
熊本放送賞
structural vessel (ストラクチャル ヴェッセル) 【馬場 康貴】岐阜県
「磁器」の特徴として無機的な素材感と光と影をテーマに制作している。光と影の存在を明確にする形状として正方形のチップを階層状に構築している。それにより恣意的な感情を排除した「幾何構造」へと昇華した。
佐賀県商工会議所連合会賞
染錦花暦図陶筥 (ソメニシキハナコヨミズトウバコ) 【吉富 文代】佐賀県
くりぬいて、赤絵をつけて焼いたものです。
佐賀新聞社賞
彩色線文広口花器 (サイシキセンモンヒロクチカキ) 【小川 洋一】佐賀県
板つくりにより陶土にて制作。縦に伸びる造型に対し、横への波の線文にて、動きを出しました。
サガテレビ賞
『湧水』 (ワキミズ) 【植木 薫】佐賀県
陶業時報社賞
和紙染格子文面取壷 (ワシゾメコウシモンメントリツボ) 【中尾 英純】佐賀県
大きさの異なる和紙を重ね、ぼかしの技法を使って濃淡を出しました。
西日本新聞社賞
玄 (ゲン) 【副島 信幸】佐賀県
漆黒の微妙な奥深さ深遠なおもむきに辰砂の赤との競演を考えて作りました。
日刊工業新聞社賞
萩御本手窯変壷 (ハギゴホンデヨウヘンツボ) 【西林 美奈子】山口県
萩土の柔らか味と、御本の発色の美しさをほたるが舞う姿のように見立て、風情のある観賞をします。
日本経済新聞社賞
氷青磁鉢 (ヒョウセイジバチ) 【青木 昌勝】佐賀県
氷河をモチーフに澄みきった淡い青の色彩を表現し、形状は高台部から一気に広げ、胴部で変化をもたせ、口部を2方カットしやわらかな動きのある作品に仕上げました。
読売新聞社賞
青磁黒彩鉢 (セイジコクサイハチ) 【大串 匡秀】佐賀県
青磁釉の美しさを引き立たせる為、縁に艶消しの黒を施しました。青磁と黒の調和、緊張感を意識してシンプルな平鉢で表現しました。
陶都有田国際交流協会賞
幸福のざくろ家族 (コウフクノザクロカゾク) 【呂金】(L ǚ j ī n)中華人民共和国
ゴールデンクラウンを戴いているざくろは、我々の輝かしく幸せな人生を映した。
第115回 美術工芸品・オブジェ部門 入選・入賞者一覧
第115回 有田国際陶磁展 美術工芸品・オブジェ部門 審査評
H30.4.18
審査評
審査長 外舘 和子
第115 回有田国際陶磁展美術工芸品・オブジェ部門は、総応募数127 点、前回とほぼ同数の作品が集まり、内容も多岐にわたるものであった。受賞作だけを見ても、磁器・陶器、うつわからオブジェ、組み物など多岐にわたっている。会派を超えて多様な作風が一堂に集まることで、作り手のみならず鑑賞者にとっても“陶芸の現在”を知る良い機会となるであろう。
最高賞の文部科学大臣賞を受賞した石原祥嗣さんの《彩陶扁壺》は、審査会場に入るなり、会場の片隅からも強く存在感を示していた作品である。卵型の扁壺の下部をやや削ぐことで上部の張りを強調した力強いフォルム、直弧文に由来する大胆な幾何学模様、上絵でありながら艶を抑えた質感など、造形要素のすべてが融合して、プリミティブかつ普遍性を感じさせる逞しい表現となっている。作者は74 歳。陶芸の道においては、一般的な高齢がマイナスにならないことを確信させる優品である。
佐賀県知事賞を受賞した木野智史さんの《颪(おろし)》は、清新な青白磁の美しさを活かし、吹く風を想わせる軽やかな造形を実現している。正面性が強い作品だが、帯状の面の縁を、手前は薄く鋭く、反対側は幅を持たせて形態に抑揚と陰影を与えている。変化に富んだ形が台などに頼らず、自立している点も良い。
有田町長賞を受賞したレオナルド・バルトリーニさんの《シレンテ》はタイトルによれば静けさの意。膨らみを持たせたタタラの面をエッジで立ち上げることで、時間の流れを静かな律動的フォルムで表現している。色調のテラコッタ色も、いかにもイタリアらしい。
今回は日展の大樋年雄氏、伝統工芸の鈴木徹氏とともに審査にあたったが、議論の中で三者の意見は概ね一致しながらの審査であった。どのような方向性であれ、良い作品は良い、という芸術の根本を確認する審査であった。
第115回有田国際陶磁展 審査員
(50音順・敬称略)
氏名 | 所属 | 備考 | 推薦者 |
大樋 年雄 | 日展特別会員 現代工芸美術家協会常務理事 | 日展会員 | 馬場 九洲夫 |
鈴木 徹 | 日本工芸会理事 | 伝統工芸 | (故)中島 宏 |
外舘 和子 | 多摩美術大学教授 | 工芸評論家 | (故)中島 宏 |
美術工芸品・オブジェ部門審査風景【佐賀県立九州陶磁文化館】