波は、海を渡ってきた器の歴史の流れをあらわしています。水のように形を変えながらも、世界に広がり続けることを願って描きました。
梅の花は、1つ1つの器をあらわしており、花びらが渦のように中心に流れる様子が多くの歴史や技術の集合体であることを教えてくれます。
120年以上、培ってきた歴史や技術、思いが集まった今だからこそ、原点や初心に戻ることが大切なのだと実感できました。
江口 景太さん
今回の国際陶磁展のテーマである「原点回帰」を表す上で、私は磁器の材料である、陶石の成分に注目しました。陶石の成分のほとんどが石英であり、石英の分子構造をモチーフに描きました。
立体的に描いて空に伸びるようになっていて、歴史をつみかさねていることを表現しました。
また、赤でぬった部分は、生産者の技術、青の部分はその技術によってできた作品を表現しました。
中島 愛莉さん
技術の交流や競争と知識の増進のため、陶磁展が始まったことを表現したかったので、同心円を人とみたて、広がりは時の流れ、色は技術や伝統とし、円の交わりを交流、色の変化で知識の増進と伝統の変化を表しました。この色の変化は基となるものから、その人らしさを入れたり、全く違うものに変わったり、ずっと変わらず伝統を継承していく様子を表しています。中央の円は陶磁器を表し、人々の技術や伝統によって成り立っていることを表現しました。右に同心円がないのは、新しい陶磁器がこれから作られていく、描かれていく様子を表しているためです。
審査員総評
審査長 寺内 貴信
今回のテーマは「120回目の原点回帰」
原点回帰というテーマのもと、120回目を迎える有田国際陶磁展の歴史を紐解いていく必要があり、有田工業高校デザイン科の生徒たちは作品を制作するにあたり、有田焼の歴史についての勉強から始まったとのことだった。
様々な捉え方のできる今回のテーマの中で、有田焼の伝統的な文様や絵柄を多く用いてそれぞれの学生が自らの着眼点で原点回帰のコンセプトを考えた独特な表現の作品が多くあった。
優秀・入賞を獲得した作品においては、そのテーマの中で個性的な表現をしている作品に審査員の票が多く入った印象である。
最優秀を獲得した作品はその中でも色彩表現豊かで、束ねた熨斗をモチーフに伝統を受け継いできた人と人のつながりを表現されており、作品としてのインパクト、デザイン力の高さが高評価を得た。
全体的にテーマの捉え方が面白い作品が多くあり、惜しくも入賞を逃した作品についても色彩表現や空間の構成次第では候補に挙がるような作品が多くあった印象である。
審査員
- 寺内 貴信(有限会社 李荘窯業所)
- 江口 佳孝(佐賀県窯業技術センター デザイン部長)
- 三木 悦子(佐賀大学 芸術・地域デザイン学部 准教授)
審査風景