私は「うちなる輝き」というテーマを「作り手の思い・願い」、「長く続いてきた歴史」と解釈しました。メインに描いた「観世水」という文様には、「常に変わり続けていく未来」という意味があり、観世水の中には主に「繁栄」や「永遠」の意味を持つ文様を描きました。長い歴史の中でも、ずっと変わらない作り手の思いや、大切にされてきたことを表現しました。また、120年以上続いてきた長い歴史が、これからも末永く続き、愛され続けますようにと願いを込めて、「調和」「円満」の意味を持つ七宝つなぎを背景に描きました。七宝には「人と人の無限のつながりという意味もあり、人から人へ受け継がれてきたことを表現しています。
梶原 舞(かじはら まい)さん
私のコンセプトは「くみ取る」です。私は「からめとる、すくいとる」という意味を持つ、網目模様を立体的に捉え、表現しました。網目のすき間から焼き物に絵付けされる麻の葉模様や矢絣模様などの受け継がれてきた文様が網目を押しゆがめるように描きました。私は築かれてきた焼き物の積み重ねの技術や、文様、それまでの変化の過程が「内なる輝き」だと感じたので、作品では網目を輝きの袋だと表現しました。それが今後も絶えることなく“良い部分をからめとって、くみ取りながら続いてほしい”という願いとともにデザインしました。
川久保 希來(かわくぼ きら)さん
私は、上から流れてきた感じに描きました。そうすることによって、今までの伝統的な事がまたやってきたという意味を持たせました。また「内なる輝き」というテーマから、昔から使われてきた文様をたくさん使って描くことによって、輝いているように見えるのではないかと思いました。有田焼がこれからも続いてほしいと願い、文様は有田焼に用いられるものを選びました。
審査員総評
審査長 山本 晃平
今回のテーマは「内なる輝き」
抽象的なテーマをどう捉えるのか。コンセプトを絵に落とし込みポスターとしてどう表現していくのか。有田工業高校の生徒は有田焼を見て学び考えるところから始めたとのことだった。
生徒それぞれが自分なりにテーマを解釈・表現し、初々しく面白い作品が多くみられた。
今回、上位に選ばれた作品はどれも素晴らしく僅差であったが、その中でも最優秀賞に選ばれた作品は、今までの作品にない斬新な色彩・構成のアイデアが審査員の目に留まった。少し粗さが目立つものの、それに負けない豊かな表現力が審査員の心を掴んだ。
最優秀賞の作品は、「内なる輝き」を光が一転に集中し輝きが強くなることと捉え、今までの歴史で培ってきた技術や思いが集まり魅力的に輝く事を表現しているとのことだった。
まさに有田国際陶磁展に出展される作り手の思いが表現されており、有田国際陶磁展に相応しい作品ではないかと思う。
審査員
- 山本 晃平(有限会社 やま平窯)
- 江口 佳孝(佐賀県窯業技術センター デザイン部長)
- 三木 悦子(佐賀大学 芸術・地域デザイン学部 准教授)
審査風景