緑彩化粧の地色に対して、赤の線描で波文様を組み合せて、制作しました。
第118回 美術工芸品・オブジェ部門 入選・入賞者、招待作品一覧
美術工芸品・オブジェ部門(こちらよりダウンロードできます。)(PDF:196.3キロバイト)
第118回 美術工芸品・オブジェ部門 審査評
2022.4.7
第118回 有田国際陶磁展
美術工芸品・オブジェ部門 審査評
審査員長 徳留大輔
2022年、わたしたちの日常を揺るがす紛争や地震、そしてコロナ禍といった、心を傷める出来事、そして閉塞感が漂っている今日。少しでも日常をとりもどし、また心や生活を豊かにしてくれる芸術活動の一翼をになう、第118回有田国際陶磁展が開催されますことに、感謝とお慶びを申し上げます。
今回の出品点数は前回より20点減少こそしたものの、様々な創造・視点による作品80点がエントリーされました。審査員は石橋裕史さん、桑原紀子さんと徳留の3名。一次審査で入選作品67点を、二次審査で入賞候補作品17点を選定し、合議の上で14点の入賞作品を決定しました。
第一席の文部科学大臣賞を受賞された岡田優さんの《白釉稜線浅鉢》。口径50cmをこえる大振りの鉢で、失透性のあるクリーム色の釉薬が全体に柔らかい表情を生み出しています。一方で、器の外側から内側へつづく稜線、またその間をつなぐエッジの効いた口づくりが、作品全体にほどよい緊張感をもたらしています。この作品は横、上、斜めと色々な角度から見ていただき、表情の変化も楽しんでいただけることも魅力です。
第二席の佐賀県知事賞を受賞された福吉浩一さんの《炭化線象嵌鎬陶筥「さざ波」》。こちらも長さ50cm近い非常におおきな作品。黒色の背景に象嵌により白から青へと徐々に色味を変化させながら、しかも微妙に線の太さをかえることで表された線文が、鎬削りにより生み出された複雑な形と非常によく調和する効果を生み出しています。蓋をあけると、内側にもリズミカルに配された線象嵌の美しさに思わず「ワァー」と、審査員一同驚きの声をあげてしまった作品です。
また有田町長賞を受賞された中尾純さんの《釉象嵌鉢》は、器の形そのものが緩やかに波打つように仕上げられたフォルムと釉象嵌による文様が連動し、また白磁の美しさとも相まって端正かつ気品溢れる作品です。佐賀県陶芸協会賞の宮島正志さんの《茶に想う》は、確かな技術力をもとに生み出されたフォルムに、愛らしい色彩とデザインが現代的かつかた肩の力をぬいて茶の湯を楽しめそうな雰囲気にさせてくれる作品です。
今回惜しくも入選されなかった作品も含め、作り手の思いやその表現の形態、方向性は無限で非常に多様であり、それが見るひと、使うがわに感動を与えてくれる、またそれが陶芸の魅力であることを再認識させてくれる機会となりました。ぜひ、一人でも多くの方に本展覧会に足を運んでいただき、作品を見て楽しんでいただきたいと思います。
第118回 美術工芸品・オブジェ部門 審査員
美術工芸品・オブジェ部門 審査員 (50音順・敬称略)氏名 | 所属 | 備考 | 推薦者 |
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石橋 裕史(いしばし ゆうし) | 日本工芸会理事 | 正会員・京都府船井郡京丹波町 | 今泉今右衛門 |
桑原 紀子(くわはら のりこ) | 日展(工芸美術) | 日展会員・京都市左京区 | 馬場 九洲男 |
徳留 大輔(とくどめ だいすけ) | 出光美術館 主任学芸課長 | 評論家・東京都千代田区 | 今泉今右衛門 |