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有田の陶磁史(19)

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「伊万里型」の割竹式登り窯については、朝鮮半島の南部、現在の韓国あたりの技術がベースとなっていることを、前回記しました。残念ながら、「岸岳型」の割竹式登り窯までたどり着きませんでしたので、今回は、これについてお話ししてみたいと思います。

「岸岳型」ですが、こちらはなかなか難物です。岸岳に多い藁灰釉製品の類似性から、中国の鈞窯系の技術との関連性を指摘する説などもあります。でも、築窯技法や窯詰め技法などから察すると、右から見ても左から見ても、斜めから見ても、たとえ百歩譲ろうが千歩譲ろうが、朝鮮半島に間違いありません。

でも、韓国にはないんです。同じものが。窯道具のトチンも、形状が違っていますし。本日も、絶対横道にそれないよう、窯道具の説明はしませんけどね。それに、藁灰釉製品、韓国でも本気で探せば見つかるのかもしれませんが、まあ、とりあえずそのレベルです。ついでに、韓国で、腰部から下を無釉にした碗類とかを探すのだって苦労するんです。以前、お話ししましたが、ほとんどは朝鮮半島風の分類では磁器なので。目積みのため高台内を無釉にするものはままありますが、全面施釉が原則です。という感じなので、韓国の窯跡で、腰部以下を無釉にした藁灰釉の碗の類例を探すのなんて、「糠の中で米粒探す」のことわざ並み、いや、切実なとこでは、最近ますます深刻さを増す老眼で針に糸を通すくらいの難しさでしょうかね。

結局、中国ではない。朝鮮半島の中でも、韓国の地域では探せない。となると、どうなるか?消去法で行くと、今世界をお騒がせしている、かの国しかなくなってしまうんですね。これは、さすがに調べたくても調べようがありません。またその中でも関係ありそうな場所が、強制収容所とか核実験等のニュースなどで、時折耳にする場所だったりするので、何をか言わんやというところ。将来、世界が平和になったら、どなたか調べてみてはいかがですか。

幸運にも、戦前の採集陶片のコレクションが残っているので、ある程度製品は確認できるんですが…。あるんですよ、これが。藁灰釉の腰部以下無釉の碗とか。ただし、昔のことですから、窯道具類などには目が向いてないので、知る限り一切含まれていません。トチンの一つでもあると、分かるかもしれないんですけど。

実際には、岸岳の藁灰釉製品の源流を、北朝鮮の咸鏡北道の会寧あたりの製品に求める説はかなり前からありました。ただ、藁灰釉があるからだけでは、中国・鈞窯系説と大差ありません。でも、今回ご紹介したように、ほかの視点でも、朝鮮半島に違いないが、韓国ではなさそうってなってしまうんです。すぐに答えは出そうにはありませんが、今のところ岸岳の技術についてはそんな感じです。(村)

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図1 藁灰釉碗〔岸岳・帆柱窯跡〕

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図2 藁灰釉碗〔北朝鮮・鏡城郡朱南面三郷洞〕(浅原伯教コレクション)

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