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有田の陶磁史(22)

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あけまして、おめでとうございます。本年も、文化財課職員一同、ちと心もとない脳みそをフル稼働しつつ、有田のことを少しでも多くの方々にお伝えできるようブログの執筆に鋭意努めますので、昨年に変わらぬご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

ということで、昨年の続きですが…。何でしたっけ?そう、割竹式と連房式登窯の、見分け方みたいな話しをしていたところでした。たぶん、今回はその3でしょうか。いよいよ一番の本筋です。ただ、内容は単純なんですが、説明が難しいのでどうしたものかと…。かなりゴチャゴチャしますが、ご容赦を。
前に、登り窯の焼成室内の説明で、前部分に火床、後ろ、つまり上方部分に製品を詰める砂床が位置するという話しをしました。実は、焼成室内の床面の部位で、もう一つ名称の付いている部分があります。「火床境」と称されるものです。これは、断面が四角形や半円形の粘土製の棒を、火床と砂床の境に並べたもので、火床と砂床の仕切りの役割を果たします。発掘調査すると、自然釉がドロドロに付着して窯床と熔着している場合がほとんどです。

どの窯でも、だいたい火床と砂床の境目はドロドロ状態なのでちょっと分かりにくいのですが、厳密に言えば、割竹式に火床境の施設はありません。というのは、別に仕切りを設けなくとも、火床部分が深く掘り込まれている、つまり、火床と砂床には大きな段差があるので、あえて境の出っ張りを造る必要がないのです。窯にもよりますが、割竹式の場合は、火床の深さが20cm以上あることも珍しくありません。一方、連房式の場合は、10数cm掘り込まれる場合もなくはありませんが、まったく砂床との高さに差がないものも、むしろ一般的と言えるほど珍しくないのです。
この差は、何よって生じるのでしょうか。実は、割竹式と連房式では、焼成室の奥壁を立てる位置が違っています。連房式が一つ上の焼成室の段上に奥壁を設けるのとは異なり、割竹式はいわば下室の奧側に奥壁があります。分かりにくいですね。

必ずしも適切ではないかもしれませんが、言いかえます。先ほど、割竹式の火床と砂床の境には、高い段差があると言いました。連房式の、いわば奥壁の段に当たるのがこの位置なのです。そのため、連房式の場合は上室との間に段差がありますが、割竹式の場合は、下室の砂床と上室の火床の高さにはほとんど段差がありません。正確に言えば奥壁基部の土を少し盛り上げたりしてますので、測り方にもよりますが10cm程度の段は付けられていたりはします。
よって、焼成の際の熱や炎は、連房式の場合は、奥壁の段上に設けられた温座の巣まで上昇して上室へと抜けていきますが、割竹式の場合は、下室砂床と温座の巣の高さがほとんど変わりませんので、そのまま横に抜けて、上室の火床の側面に直接当たってから上昇することになります。そのため、割竹式の火床の奧側の側面はドロドロに熔けているのが一般的です。

もう少し、割竹式と連房式の違いや、なぜ割竹式から連房式へと急速に移行していくのかということについて書きたかったのですが、今回はちょうどこの辺で文字数がよろしいようで。(村)H30.1.5

図1_1

       図1 割竹式と連房式の火床付近の側面からの模式図

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