これまで当館館報や、このブログでも紹介しましたが、岩谷川内の窯元であった松尾徳助さんは昭和元年(1926)の9月9日に死去しました。享年70。それからまだ100年は経っていないのですが、子孫の方でも徳助さんに会ったことがあるという人はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。徳助さんが生まれたのは安政4年(1857)で、まさに幕末から明治、大正、昭和と激動の中を生きぬいた一生でもありました。
彼の功績は数多くありますが、中でも素焼き窯の燃料として石炭を使い始めたこと、敷瓦(タイル)を焼き始めたことなど、有田に於いて新しい分野に果敢に取り組んだことではないでしょうか。佐世保市沖に浮かぶ黒島の集落はこのほど世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に登録されましたが、その信仰の核となる建物が黒島教会で、その祭壇には松尾徳助窯の敷瓦が1000枚以上敷き詰められています。
このほかにも大形の楠公父子像を少なくとも2体焼いていて、その一つが伊万里市大川町駒鳴の熊野神社境内に、そしてもう一つは当時の東京商業学校(現在の一橋大学)に寄贈されました。寄贈の経緯はよくわかりませんが、残念ながら東京商業学校の作品そのものは確認できていません。伊万里市のそれは屋外に設置されているということもあって、随分破損していますが、「大日本 肥前国 有田皿山 精玉組 松尾徳助 製造」という染付銘が施されています。ただ、当館に寄贈いただいた松尾博文家文書の中には学校側の受領書が残っていますので、同じものであったことは容易に想像できます。
以前、その資料に関して一橋大学の方から問い合わせがありましたが、今回それも含めた大学に残る資料に関するシンポジウムが開催されるということで、担当の手塚さんからご連絡がありました。近かったら行きたいのですが、如何せん、余りに離れておりますので残念ながら断念。お近くの方で興味をお持ちの方はご参加ください。(尾)H30.10.29
・言社研レクチャー シリーズ 「一橋大学の文化資源」
「開かずの扉がひらくとき:一橋大学商品陳列室・商品標本室の歴史と現況」
・日時 平成30年11月2日(金曜日) 15時30分~18時
・場所 一橋大学 国立東キャンパス国際研究館3階 大会議室
・主催 一橋大学大学院言語社会研究科
・入場無料 事前登録不要 先着40名