先日、町内岩谷川内在住の奥川紀子さんご夫妻が来館されました。用件は名古屋市にあった旧江副孫右衛門家の住宅が古くなったということで、子孫の三宅加代子さんが整理を進めている中、有田町から江副家に寄贈された皿があり、どうしたものかと思案した結果、旧知の奥川さんに相談されたそうです。その皿を持参いただいたのですが、箱書きの裏に「奥川忠右衛門作 川浪養治画」とあります。
孫右衛門さんは昭和22年、第1回統一地方選挙が行われた際、無投票で有田町長に就任。その後、2年ほどして経営の危機にあった東洋陶器の再建のため、町長を辞任し社長に復帰しました。この作品は、昭和36年10月18日に金婚式を迎えた孫右衛門・たき夫妻へのお祝いに有田町が贈ったものでした。昭和の時代も遠のく中にあって、製品の作者や来歴が明確にわかるものはそう多くはありません。
初代奥川忠右衛門さんは明治の名工・井手金作の弟子であり、川浪養治さんはこれまた名工とうたわれた川浪喜作さんのご子息です。初代忠右衛門さんと喜作さんのコンビで製作されたのが陶山神社境内の大甕で、今回の作品はその次世代のコンビによる大皿です。なにか、ご縁を感じる作品でもあり、有り難く資料館への寄贈をお受けしたという次第でした。(尾)H31.2.25