第39回は、「天神森(てんじんもり)窯跡」です。
所在地は有田町南山です。史跡には指定されていません。
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天神森窯跡標柱 | 天神森窯跡陶板 |
天神森窯跡は、1974年度、1995年度に有田町教育委員会が調査主体となり、発掘調査が行われています。その後、1975年に『佐賀県有田町天神森古窯址群調査概報』が、1996年に『天神森窯・小物成窯』が有田町教育委員会より刊行されています。また、1988年に『有田町史 古窯編』でも紹介されています。
発掘調査では、少なくとも10基以上の窯体があるとわかっています。1号窯は1974年時には窯壁の一部が確認できていましたが、現在は未調査のため確認できていません。2号窯は道路や公民館建設に伴いそのほとんどが破壊されており、分断された崖面に一部残存するのみとなっています。また、2号窯の上に重複して10号窯が存在します。3号窯は4号窯と同一の可能性もありますが、ともに道路建設や宅地造成で消滅しているものの、残存部については比較的良好に遺存しています。5号・6号窯は大半が道路建設と公民館建設で消滅しており、山林中に一部残る程度となっています。7号窯は窯尻から14室まで遺存しているとみられ、下部は消滅していると考えられます。8号窯については現在も確認できますが、窯体の4室が現在も露出しています。9号窯は2号・10号窯の近くにあり、同じく道路と公民館建設時に大半が破壊されており、崖面に焼成室の断面が一部確認できる程度です。
出土している遺物は、2号・6号・8号窯は陶器のみで灰釉の碗・皿・鉢・小杯が出土、3号・4号・7号・9号・10号窯は陶器と磁器が出土しており、陶器は灰釉の碗・皿・片口鉢、鉄釉の火入れ・壺、三島手の瓶が出土、磁器は染付の碗・皿・鉢・火入れ・瓶・壺・水滴・仏飯器、白磁の皿・小杯・水指、青磁の香炉、瑠璃釉の小杯・香炉が出土、5号窯は磁器のみ出土で、染付の碗・皿、青磁の香炉、瑠璃釉の碗・香炉、鉄釉の茶入が出土しています。窯道具はトチン、ハマ、ボシ、緒締め玉用焼台が出土、ハマは円板形や逆台形で、ボシはロクロ成形、2号窯では皿に胎土目積みを用い、3号・4号・7号では陶器皿に砂目積みが見られました。
文献等にも記録があり、『今村氏文書』の「南川原山」の窯場の一つの可能性があり、小溝窯と並んで有田町で最初に成立した窯場である可能性もあります。遺物や文献等から、1610年代中頃~1630年代最初期の操業と推測されます。
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天神森窯跡(7号窯跡) |
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天神森窯跡(8号窯跡) |
写真の通り天神森窯跡には、説明陶板や標柱が建っており、公園になっているので気軽に現地を訪れることができます。ただし、8号窯のような窯体を見る場合、草木も生茂り、蛇や蜂、マダニも出てきます。また、斜面になっているので十分に気をつけてください。
なお、1988年刊行の『有田町史 古窯編』、1996年刊行の『天神森窯・小物成窯』については、有田町歴史民俗資料館において取り扱ってますので、お問い合わせください。
(伊)R1.6.20