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有田の陶磁史(252)

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 前回は、“古九谷様式”の分類についてお話ししていました。“五彩手”“祥瑞手”“青手”っていうやつですね。でも、これって色絵製品による分類で、染付製品のことはハナから頭にありませんってことでした。

 じゃ、これに染付製品を当てはめるとどうなるかと言えば、染付で器面を全部塗り潰すものは通常ありませんので、“青手”に対応するものはありません。ですから、多くは“五彩手”に対応するものということになるんですが、染付だけで地文や丸文を描いた“祥瑞手”に相当するものも珍しくありません。

 “祥瑞”について触れたついでにお話ししておきますが、同じ中国の明末の景徳鎮で作られていた磁器に、“古染付”ってのがあります。“祥瑞”が明の最後の崇禎(1627)期を中心に作られているのに対して、その一つ前の天啓(1620~27)期を中心に作られたとされるものです。でも、天啓期ってちょっとしかありませんので、実際には、両方の製作時期には重なりがありますし、これって“古染付”だろうか“祥瑞”だろうかって迷ってしまうようなものもあります。通常、“祥瑞”の方は文様もいっぱい描き込んで、カチッとした仕上がりになってますが、“古染付”の方は分厚くボテッとしており、口縁のところの釉がところどころはじけて、磁肌が見えてることが珍しくありません。まあ、これを日本のお茶の人なんかが、「虫喰い」なんて呼んでありがたがってるんですけどね。

 こういう明末の製品は、中国の人にとっては、国が乱れていいものが作れなかったいわば恥時代ですので、あまりありがたがれませんでした。ですから、今でも伝世品はほとんど日本にあり、中国には残っていません。まあ、あまり整い過ぎているものを敬遠する、日本の美意識ならではのものでしょうね。

 ちなみに、“祥瑞”の色絵バージョンはそのまま“色絵祥瑞”と呼ばれますが、“古染付”の色絵バージョンは“天啓赤絵”って呼ばれています。

 で、何で“古染付”について触れたかと言えば、“古九谷様式”の製品の中には、“古染付(天啓赤絵)”を摸したものもあります。しかも、技術的には別々ではなく、“祥瑞手”と一体化して確立しています。でも、分類的には“祥瑞手”というわけではなく、色絵製品の場合“五彩手”に区分するという、毎度のことですが、何ともメンドクサイことになっています。当然、本歌の“古染付”と“祥瑞”が分けにくいものがあるくらいですから、それを摸した“古九谷様式”の製品でも、当然、迷うようなものがあるわけです。

 というわけで、今日は、“古染付”の話をしてたら、予定分量が終わってしまいました。この続きは次回。(村)

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