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有田の陶磁史(253)

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 前回は、“古染付”の話をしてたら、だいたい予定していた分量が終わってしまいました。“古九谷様式”は、色絵製品による“五彩手”、“祥瑞手”、“青手”って分類が一般的って話をしてましたが、今日はちょっとこれとは別の筆者のオリジナル分類についてお話ししてみたいと思います。

 “古九谷様式”の技術は、実は、一つではなく、1644~47年頃という短期の間に、中国の3つの技術の影響を受けて、それぞれ別々に成立したと考えられます。

 一つ目は黒牟田山の山辺田窯跡を中核とする“万暦赤絵系”、二つ目は岩谷川内山の猿川窯跡を中核とする“古染付・祥瑞系”、三つ目が年木山の楠木谷窯跡を中核とする“南京赤絵系”です。

 “祥瑞”や“古染付”については、前回までに説明しましたので、その他の用語解説も軽くしときます。

 まず“万暦赤絵”ですが、これは中国の景徳鎮で万暦(1572~1620)頃に作られた色絵磁器で、中国人の感覚だと、明代でいいものが作られていた最後の時代と言えるでしょうね。ひと言で言えば、ゴチャゴチャっとした文様が特徴です。色絵だとちょっとピンとこないかもしれませんが、染付だと、“芙蓉手”と呼ばれる、皿の周囲に窓絵をぐるりと配したタイプなんかがこの時期の製品です。なので、“万暦赤絵系”は“芙蓉手”みたいな文様を施したものと思っていただければ、当たらずしも遠からずといったとこかと思います。

 次に“南京赤絵”ですが、これはやはり明末・清初に景徳鎮で作られた色絵磁器で、染付バージョンは“南京染付”と呼ばれます。かっちりとした素地に透明度の高い白色の釉薬を掛けるのが特徴で、西洋向けの製品などは、従来の中国製品のようにゴチャゴチャっとした文様の壺や瓶など大型製品が一般的ですが、日本向けは余白をタップリと取った絵画性の高い文様の小型製品が特徴です。これを摸したのが“古九谷様式”の“南京赤絵系”で、他もそうですが、別に色絵にこだわっているわけではありませんので、染付製品も含めた分類だとお考えください。

 ということで、つまり、この3つの系統は、同じ景徳鎮製品の技術が元になっていますが、その元になった技術の成立時期が異なるということです。万暦はちょうど日本で磁器がはじまった頃で、まだ色絵はなかった時期です。“古染付”や“祥瑞”が作られた天啓・崇禎期(1620~1644)もこれから色絵がはじまるって直近の時期ですが、“南京赤絵”はまさに有田で色絵磁器がはじまったその頃の最新の技術って考えていただければいいかと思います。

 ということで、本日はここまで。(村)

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