「ほこり流しをするんだけど参加できる?」
先日先輩にかけられた言葉なんですが、皆さんは私が何に誘われたのかおわかりになるでしょうか?私は何に誘っていただいたのかさっぱりわかりませんでしたが、「ほこり流し」は「忘年会」のことを指します。有田では、忘年会のことを「ほこり流し」または「ごみ流し」と言うそうです。
有田の方言についてまとめられた『有田言葉『有田弁で話そう』』では、「ほこいながし(埃流(ほこりなが)し)」として記載されています。意味は、「作業や掃除等をしたあとに酒肴でねぎらうこと」と書かれています。また、明治から昭和にかけて有田皿山で活躍した人々や風俗を紹介した『有田皿山遠景』では、以下のように語られています。
「大晦日、工場で迎春の飾り付けが始まる。薪の輪じめを台にした門松ができ上がる。その年最後の仕舞い窯に火を入れたあと、窯のまわりやロクロのすすや陶土の削り粉を取り除き、鏡餅が供えられる。一年間働いたコテ、ヘラ、トンボ(成型のときに使う物差し)などの道具がきれいに磨かれる。それらが一段落したところで、窯元が振る舞い酒を出す。これを「ほこり流し」といった。」
以上の記述から、年末の大掃除の後にお酒が振る舞われたことから、「ほこり流し」と言われたと考えられます。私が「ほこり流し」と聞いて、「大掃除かな?」と思ったのはあながち間違いではなかったようです。
また、当時の窯元と職人との契約は1年契約で、12月で契約が切れてしまいます。12月半ばになると来年の雇用の話し合いが行われます。中には話し合いが年明けまで続いたケースもあったようです。窯元にとって良い職人を多数つかむかどうかが来年の売り上げを左右しますから、この話し合いはとても重要だったと思います。このような事情から、1年の労をねぎらうという意味もあったと思いますが、良い職人を他の窯に逃がさないための方策としてお酒を振る舞っていたのかもしれませんね。
今回のブログは、有田の方言であるほこり流しについて紹介しました。有田皿山の風習が、方言という形で現在に残っていると思うと、おもしろいですね。今回のブログで紹介した『有田皿山遠景』は、当館で販売をしておりますので、気になる方はチェックしてみてください。(宮)R1.12.10