文字サイズ変更 拡大標準
背景色変更 青黒白

有田の陶磁史(260)

最終更新日:

 前回は、もともと話題にしていた鍋島報效会所蔵の国の重文「色絵山水竹鳥文輪花大皿」さえも出てこないままでした。「源姓副田氏系圖」の記述から、高原五郎七がキリシタン宗門改があるとのうわさから夜逃げし、弟子の副田喜左衛門日清らは、うち捨てられた青磁の道具を拾い集めて、それを参考に青磁を再興したって話でした。でも、その中で、“青磁の諸道具”って何?“青磁素焼物”って何って話で終わってました。今日こそは、ちゃんと筆者流の解釈をご紹介します。

 要は、「源姓副田氏系圖」に矛盾しない解釈がはたして成り立つかどうかということですが、一つだけ何とかなりそうな捉え方があります。というのは、この“青磁”というのを“Celadon”ではなく、試しに“Overglaze porcelain”、色絵磁器のことと考えてみてください。鍋島報效会所蔵の「色絵山水竹鳥文輪花大皿」もそうですが、その手本となった祥瑞大皿なんて、まさに緑で塗り潰した青い磁器ですから、まさに青磁でしょう。LEDになってだいぶ見かけなくなりましたが、昔の青信号は実際には緑でしたし、「青々と茂った草」なんて言うじゃないですか。日本人には緑とは青です。

 もう一度、「源姓副田氏系圖」を振り返ってみると、前段は「有田岩谷川内へ移リ青磁ヲ焼出シ世上ニ発向ス其頃 御献上始リ珍器品々焼立被 仰付青磁ノ法人不知ニ依テ岩谷川内ヘ御道具山ト相唱立差上ル」です。色絵のはじまりのことだと考えたら、1640年代の中頃のことですから、まさにピッタリ。慶安4年(1651)に将軍家への例年献上がはじまるわけですから、その少し前に藩主に献上するようになったってことです。もちろん、この頃なら本当の青磁がはじまった1620年前後にはなかった、岩谷川内山も存在しますし。

 続いて、系図の後段も見ておくと、「青磁諸道具跡モナクハ谷ニ投捨置シヲ日清善兵衛ヲ引供シ青磁素焼物等拾集水干シテ相考青磁土兼テ打出ス所ノ道筋尋届色々工夫ヲ以漸サトリ再ヒ焼出シ御用相成通出来立候」です。ほんまもんの青磁なら道具は染付製品と変わらないはずですが、色絵なら多少使う道具が違うでしょ。それから、「青磁素焼物」ですが、素焼きとは、現在では一般的に成形した生地を低温焼成したものを呼びます。でも、1640年代中頃のことだとしても、まだタッチの差で素焼きの技法は開発されてませんので、これは別の意味と解釈する方が妥当です。たぶん低温焼成のことでしょうね。だったら、色絵は低温で焼き付けますから、上絵の具を低温焼成、つまり素焼きしたもの、これなら「素焼物」と言ってもあながち間違いではないでしょ。もちろん、水に濡らしても色落ちはしませんので、水干ししても何ら問題はありませんし。それに、今までの技術にはなかったわけですから、上絵の具の原料の調達や調合などもしないといけないので、いろいろ工夫するのもうなずけますね。この解釈はいかがでしょうか。個人的には行けると思うんですけどね。

 でも、肝心なことを忘れてました。果たして、鍋島報效会所蔵の「色絵山水竹鳥文輪花大皿」が岩谷川内山の製品かってことです。そうでなければ、いくら系図と整合性があっても、何の意味もないですから。次回は、そのあたりを考えてみたいと思います。(村)

このページに関する
お問い合わせは
(ID:174)
ページの先頭へ
有田町役場 文化財課

〒844-0001 佐賀県西松浦郡有田町泉山一丁目4番1号

電話番号:0955-43-2678

FAX番号:0955-43-4185

© 2024 Arita Town.