前回までに、2次調査で出土した5種の石器についてご紹介しましたので、残りの石器についてご紹介したいと思います。これらの石器についても、使用されている石材は黒曜石やサヌカイトが主となりますが、石斧については安山岩(あんざんがん)や蛇紋岩(じゃもんがん)、硬砂岩が使われています。
・石斧(せきふ)
石で作られた斧です。樹木等をたたき切る道具になるので、石材は比較的に硬度の高いものが必要となります。そのため安山岩や蛇紋岩といった石材を使用しています。遺跡からは打製石斧が3点、磨製(ませい)石斧が9点出土しています。ちなみに打製石斧とはたたき割った石器を斧の形状にしたもので、磨製石斧は、たたき割った石器を斧の形状にした後に砥石で刃部などを研いで成形したものです。
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出土石斧図面 |
・石匙(いしさじ)
特殊な形状をしており、使う目的に応じた形をしている万能ナイフの役割をしていて、持ち運び時に紐などを結べるつまみがついた石器です。その形は、突き刺すための細長いものやナイフのようなもの、植物を摘み取るための方形のものなどがあります。出土品は細長い横長のもので、サヌカイト製の石匙が1点です。
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出土石匙図面 |
・掻器(そうき)
主な用途は、衣類などに使用する動物の毛皮の、内側についている脂肪をこそぎ落とす道具で、ヘラのように使います。原石を打ち割って取れた剥片の、緩やかに湾曲した部分を刃部として、細かく調整するように割っていき、ヘラのようなスプーンのような石器です。黒曜石製のものが30点、サヌカイト製のものが35点出土しています。
・砥石(といし)
砥石については、包丁を研ぐときなど普段から使っている方もいるかもしれませんが、用途は昔から同じです。出土した砥石は、石英粗面岩や砂岩です。ただ、この遺跡からはあまり磨製の石器は出土していないので、使用頻度は少なかったかもしれません。
・磨石(ませき)
大小さまざまな円形の道具で、遺跡の貯蔵穴から出土した、ドングリなどの木の実を加工するためのものと考えられます。石材は砂岩と玄武岩(げんぶがん)です。大きいもので直径が約12.5cm、厚さが8cm、小さいものは直径約4cmで扁平の球形をしていて、2次調査では9点確認されました。
以上で、坂の下遺跡第2次調査で出土した石器の紹介を終わります。次回は、土器のことに少しふれ、網紐類が出土しているので、そのことをご紹介したいと思います。
(伊)R2.8.13