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有田の陶磁史(164)

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前回は、日本では同じ磁器に分類される“青瓷”“白瓷”が、ヨーロッパでは“Porcelain”“Stoneware”に分けられ、“Porcelain”とは、ヨハン・フリードリッヒ・ベドガーが1709年にドイツで開発したような“磁器”のことを指すという話をしてました。そして、その磁器とは、当時、日本や中国から輸入されていた“白い黄金”とも称された、染付を基本とする磁器のことであるというところで終わってました。続きです。

このブログでも何度か触れていると思いますが、こうした磁器は、14世紀に中国の景徳鎮ではじまりました。“元染付”とか“元青花”とか呼ばれるものです。日本で発明された磁器も、このグループに入ります。このグループは、原則的に胎土が磁器質であることを必須条件とします。一方で、それ以前から生産されている“青瓷”などのやきものは、必ずしも、胎土が白い磁器質であることを必須とはしません。有名どころでは、例えば、中国の南宋官窯の青瓷などをイメージしていただければ分かりやすいかと思います。ご存じなければ、ネットでググればいくらでも画像が出てきます。こうした青瓷の胎土は、白ではなく真っ黒の土で、表面に独特な貫入が入りますが、これは胎土と釉薬の収縮率が異なるからです。だから、日本の古代の“青瓷(あおし)”や“白瓷(しらし)”も“磁器”ではないですが、“瓷器”なわけです。

これも込み入った話はカットしますが、日本の場合も、本来は東洋ですから、“土器”“陶器”という中国の“陶”“瓷”と類似したやきもの分類の概念が確立していました。しかし、明治になって西洋からの窯業技術の導入とともに、胎土の質を重視するヨーロッパ的なやきもの区分の概念ももたらされたのです。そのため、東洋と西洋がグチャグチャに混じっているのが、現代の日本のやきもの分類です。ですから、通常、“土器”“陶器”“炻器”“磁器”の4つに分類しますが、もともと分類になかった“Porcelain”は日本ではじまったものと同種ですから“磁器”という名でイメージが確立しましたが、“Stoneware”は、現代でも明確なイメージが確立していません。なので、日本のやきものの中で“Stoneware”はどれと言われても、たいていの場合は、はっきりとした答えは返ってきません。だって、同じ炻器質(Stoneware)でも唐津焼は陶器に入れますが、もともと東洋では磁器(瓷器)だった青磁は磁器として区分するでしょ。つまり、建て前上は4分割ということになってますが、日本人の脳ミソの中では、実際には炻器を除く3分割になっているわけです。

“Stoneware”は、最初は“石器”と訳されましたが、旧石器時代や縄文時代の石器と区別が付かないので、“炻器”という和製漢字が充てられるようになっています。ついでに、現代の日本では、“磁器”と“瓷器”の用語を使い分けておらず、原則的に“磁器”の表記で統一されているので、よけいに分かりにくくもなっています。まあ、“瓷器”とは“磁器”というよりも“陶磁器”、英語では“Ceramics”に近い用語だと思っていただければ、当たらずしも遠からずというところでしょうか。

ということで、区切りがいいので、本日はこのあたりで終わりにしときます。(村)R3.2.12

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