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有田の陶磁史(298)

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 前回は、外面を唐草文で埋めるBタイプの内、圧倒的に数の多いB-1タイプは、内山製って意見もあるけど、「どうですかね~?」ってことで、やっぱり山辺田窯跡周辺の窯場の製品じゃないですかねってことで、各窯場の素地の概略に触れたところで終わってました。続きです。

 前回お話ししたように、白磁大皿を生産している窯場の中でも、多々良の元窯跡や広瀬向窯跡の場合は、素地では質的にちょっと山辺田窯跡と区別できません。それは、器形も縁を折らない一般的な大皿にほぼ限られるため、特徴がないことにもよります。しかし、山辺田窯跡同様、色絵素地の割合の高い丸尾窯跡の場合は、南京赤絵系の影響が白磁大皿生産窯の中では相対的に大きいので、素地自体にも特徴がありますし、器形的にも特徴的なものが見られます。

 まあ、山辺田窯跡の場合は何でもありですから、丸尾窯跡にあって山辺田窯跡にないものなんて早々ないのも事実です。ただ、丸尾窯跡には丸尾窯跡なりの偏りがありますので、俯瞰すれば両窯場の製品の構成は大きく異なります。

 まず、全体的に山辺田窯跡の場合は素地に鉄分が多いのが普通ですが、丸尾窯跡の場合は全体的に少なめです。なので、丸尾窯の素地の方が乳白色に近く、これは見慣れれば識別できますが、ここで言葉で表すのはちょっとムリです。山辺田窯跡にもキレイな素地はありますが、それともまたちょっと感じが違います。この鉄分少なめってのが一番分かりやすいのが、畳付の露胎部です。山辺田窯跡の製品では、赤めに発色しているものがよく見られますが、丸尾窯跡の場合は白いままのものがほとんどです。

 それから、高台の作りも、山辺田窯跡の場合は、基部が太めの断面三角形に近い高台が割合的には多いんですが、丸尾窯跡の場合は、基部も先端もあまり太さの変わらない、比較的薄めの“U”字形のものが主体となります。高台幅も、広めのものが多いです。

 使われてる口銹なんかも違いますね。山辺田窯跡の場合は、口銹はほとんど端部が丸いままのもので、平らに切ったものは、かろうじて2、3点あるくらいかな~?でも、丸尾窯跡の場合は、逆にほぼ端部を平らに削ったものに限られます。

 そういえば、丸尾窯跡に特徴的な器形もあります。胴部を“3”字みたいに内抱え気味に2段に折るものは山辺田窯跡にも丸尾窯跡にもありますが、カクカクって2、3回折ってるやつとかは独特ですね。これに端部を平らに削った口銹と組み合わせたものなんかは、あまりに独特過ぎて、まず他にはないです。

 それから…、釉掛けの際の手跡も山辺田窯跡とはちょっと違いますね。山辺田窯跡も口径が40cmを超えるくらい大きなものだと、高台の中に手跡を残しますが、通常は、高台の一方をつまむ感じで手跡が残り、反対側は胴部に残っています。だけど、丸尾窯跡の場合は、高台内にベタベタと手跡を残すのが一般的なんです。

 まあ、ぱっと思い付く違いって、そんなとこでしょうか。次回は、この特徴から、もう少し具体的に丸尾窯跡の青手について考えてみます。(村)

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