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有田の陶磁史(280)

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 前回は、楠木谷窯跡では、高台内二重圏線じゃなくて、最初から一重圏線のものが基本で、皿の外面腰部にも圏線が一重巡るってことで、こういう南京赤絵系の技術の影響が、山辺田窯跡にも見られるって話をしてました。そして、喜三右衛門さんは、白磁を素地とする色絵だけじゃなく、染付圏線等を入れる素地も開発しましたので、後は染付文様をチョチョイと描けば、染付製品も作れたってことでした。まあ、全製作工程をいじりまくった系統ですので、柿の実印の絵の具の調合くらいじゃ味わえない難義したのも当然ってことで終わってました。

 そう言えば、言い忘れてましたので、ここでついでに付け加えておきますが、たぶん素焼きをはじめたのも、喜三右衛門さんだと思います。これは日本の原料特有の事情で、中国では素焼きしませんから、例の東島徳左衛門さんが中国人から習った技術に含まれてたもんじゃないはずですからね。ですから、さぞや頭ひねったでしょうね。柿の色の赤どころじゃないですから。つまり、南京赤絵系が白く…、まあ白さも程度の問題ですが、とりあえず白く、薄くできるのは、この素焼きするからです。_

 薄くって話で、突如、もう一つ思い出しました。素地を薄く作りさえすれば、薄い製品が焼けるってもんでもないんですよ。というのは、器壁が薄いっていうことは、通常は高台部分も薄いってことです。薄けりゃ、当然割れやすいですよね。

 製品を窯詰めする際に、トチンやハマなどの焼台に乗せるってことは、たぶん今までもどっかで触れているはずです。問題はハマですが、素地の分厚い初期伊万里を焼成する際にもっぱら使われたのは、通称「万年バマ」と呼ばれるハマです。その名のとおりってか、ちょっと大げさすぎる感はありますが、何度も使い回すハマのことです。でも、高台部分の器壁が薄く、特にちょっと高めのものの場合は、この「万年バマ」ではいささか具合がよくありません。なぜだと思います…?

 答えは、いくら事前に素焼きしてあっても、本焼きの際に、また1割ほど縮むからです。ところが、何度か使った「万年バマ」はもうすでに縮んでいるので、本焼きしても縮みません。そうすると、焼いてる時にハマの上に乗せた製品の方は縮みたい縮みたいって力んでいるのに、下のハマの方はグッと歯を食いしばって(?)テコでも動かないってことになります。そうすると、ご想像のとおり股裂き状態になって高台が割れてしまうことになるんですね~。だから、ハマも1回ごとに使い捨てるやつじゃないとダメなわけです。こういうハマを「共バマ」といいます。ついでに、この「共バマ」ですが、当然ながら、陶器質と磁器質じゃ縮み具合が違います。だから、磁器を焼くには、磁器質が一般的です。もういっちょついでに付け加えとけば、初期に一般的なおせんべいのような形のハマでは、底の接地面が広すぎて、安定的に縮むのがちょいと難しくなります。それで、通常は底の小さい逆台形のハマが使われることになります。いや〜、発掘すると大変なんですよ。17世紀後半以降の有田の窯跡は。ハマを使い捨てするわけですから、メチャクチャハマだらけなんで…。

 どうです?というわけで、喜三右衛門さん、想像以上に大変そうでしょ。いや~、単なる思い付きでちょっと付け加えておこうと思っただけなんですが、案外長くなってしまいました。何も進みませんでしたが、本日はこのへんまでにしときます。(村)

陶器質の円板形ハマ(楠木谷窯跡)

磁器質の逆台形ハマ(楠木谷窯跡)

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