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有田の陶磁史(285)

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 前回は、系統別の古九谷の特徴の概略とやっと南京赤絵系古九谷の具体的な話にも入れたところでした。続きです。

 系統別の違いについて、もう少し触れておきたいと思います。古九谷様式の製品には変形皿も沢山ありますが、実は万暦赤絵系のオリジナル技術には、変形皿はありません。もちろん、山辺田窯跡の古九谷様式の製品に変形皿はありますが、それは別系統の技術が入ってきてからです。

古染付・祥瑞系については、変形皿はあります。ただし、楕円だとか方形など、比較的単純な変形が一般的です。高台も厚みのある、ボテッとしたものが多いですし。それに、ロクロを使わない押し型による変形皿ではなく、ロクロ成形の後に型打ちで変形させたものも多く見られます。この場合、上から見ると変形ですが、高台は円形ということになります。それから、裏文様については、染付の唐草文や花の部分を色絵で描く、染付の折枝文なんかがこの系統が起源かと思います。

 そして、南京赤絵系ですが、こちらは変形皿は超たくさんあります。高台も薄くシャキッとしてて、糸切細工でかなり自由に変形させています。たとえば、結構ロングセラーだったみたいですが、富士山形のものなどは定番ですね。裏文様は無文のものもありますが、典型的なのは折松葉文なんかでしょうか。

 それから、1640年代頃になると、口に銹釉を塗った口銹装飾を施すものも多くなります。初期伊万里様式のものにもなくはありませんが、一般的に古九谷様式の製品に多く使われています。意外に知られていませんが、実はこれにも系統別の違いがあります。

 まず、万暦赤絵系ですが、オリジナルな技術には、口銹装飾自体がありません。くどいようですが、山辺田窯跡の製品自体には、口銹したものはあります。でも、それは別系統の技術が入ってきてからです。

 次に古染付・祥瑞系ですが、口銹するものは結構あります。同様に南京赤絵系も口銹は珍しくありません。じゃ、両者は何が違うのか?お分かりですか?実は、古染付・祥瑞系の口銹は、原則端部は丸いままです。しかし、南京赤絵系の口銹は端部を平らに削ります。つまり、両技術の混じった製品も珍しくありませんので、これだけで完全に線引きはできませんが、この違いを見れば、どちらの系統の技術で作られたものかが粗々とは分かります。この口銹の話はこれだけ聞けば「あっ、そう…。」って感じかもしれませんが、後から重要になってきますので、ちょっと覚えておいてください。

 系統別では、くどいほど見てきたように、喜三右衛門さんの開発した赤絵、つまり南京赤絵系古九谷の技術が最後にくわっと広まったもんですから、17世紀後半の有田では、南京赤絵系の影響が最も色濃く反映されています。もちろん、その前に広まった古染付・祥瑞系の技術もまったく影響が残らなかったわけではなく、最後にガバッと被さったので、相対的に南京赤絵系の方が大きいということです。

 ということで、次回はこの南京赤絵系の技術が、山辺田窯跡の中では、どういうところに反映されているのかを見てみたいと思います。(村)

 

古染付・祥瑞系の変形皿の高台(楠木谷窯跡)

南京赤絵系の変形皿の高台〔富士山形〕(楠木谷窯跡)

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