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有田の陶磁史(364)

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   前回は、御用品という意味での通称“鍋島”って、実は、別に様式は鍋島じゃなくてもいいんじゃないって話をしてました。つまり、御道具山支店の副田喜左衛門支店長が、「これ、献上用!!」って決めたもんが“鍋島”であって、本質的には、“御用品”=“鍋島”であって、必ずしも“御用品”=“鍋島”=“鍋島様式”とは限らないってことです。なので、逆に鍋島様式であることが、必ずしも御用品であることの根拠にはならないってわけです。

 前回の最後に、実は“鍋島”には二つの種類があるって話しをしました。つまり、“製品様式上の鍋島”と“生産制度上の鍋島”です。前回の話の内容で、その違いについては多少ご理解いただけたかと思いますが、あらためてお話ししておくと、まず、“製品様式上の鍋島”とは、皆さんが鍋島と言ってふつーにイメージするアレです。つまり、鍋島様式の製品のことです。もう一つの“生産制度上の鍋島”とは、御道具山支店の支店長さんが「これ“御用品”ねっ!」って決めたんで、鍋島様式じゃないけど御用品ねってやつです。

 この二つは、前回お話ししたとおり、少なくとも17世紀末以降はほぼかぶりますので、“御用品”=“鍋島”=“鍋島様式”って関係で、おおむね問題ありません。しかしそれ以前は、“生産制度上の鍋島”、つまり“御用品”=“鍋島”は成り立っても、“製品様式上の鍋島”、つまり“御用品”=“鍋島”=“鍋島様式”って関係が成り立つかどうかは、少なくとも証拠がありません。しかも、仮に“御用品”=“鍋島”=“鍋島様式”であったとしても、17世紀末以降のように、ほぼすべてが“御用品”=“鍋島”=“鍋島様式”の関係だったとは限らないわけで、“御用品”=“鍋島”のタイプも存在した可能性は否定できないわけです。つまり、ハナから「これ鍋島様式だから御用品、これ鍋島様式じゃないから御用品じゃない」みたいな捉え方は止めて、頭柔らかくしてくださいねってことです。

 いや~、しつこく何度も同じ説明を繰り返していますが、ココそんくらいめちゃ重要なんです。大半の方々が、両方の“鍋島”をごちゃ混ぜにした捉え方が、脳ミソの中にこびりついてますから。切り分けてねって言っても、言葉としては理解しても、例のパブロフのオペラント条件付けってやつと同じで…、犬にエサをヤル前にベルを鳴らすことを繰り返すと、そのうちベルを鳴らすだけでヨダレを垂らすようになるってやつ、これと同じで鍋島様式見せるだけで御用品ってなるので、なかなか手強いんですよ。

 というわけで、本日はまったく前に進みませんでしたが、次回から岩谷川内御道具山の話に戻りますので、くれぐれも頭グルグルになりますので、二つの“鍋島”を切り分けて考えてくださいねってことで、本日はおしまい。(村)

 

 

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