文字サイズ変更 拡大標準
背景色変更 青黒白

有田の陶磁史(288)

最終更新日:

 前回は、山辺田窯跡の白磁を素地とする色絵には青手と五彩手の別があり、山辺田の窯跡や遺跡の出土色絵陶片と伝世品を比べると、青手の方はほぼ対比できるけど、五彩手の方は伝世品なかなか見当たらないね~ってもんも多々あるってことをご紹介したところで終わってました。続きです。

 さて、青手と五彩手のどっちの話からしましょうか?どっちも、諸説紛々の現状でもお分かりのとおり、そう簡単な話じゃないですけど。

 あらかじめお断りしておきますが、諸説紛々なくらいですから、ここから先の話は、個人的な独断と偏見に満ちた妄想で、世間さまに認められた内容ではありませんよ。あくまでも、これまでの自分の知識と経験からいくとこうにしかならないってことなので。ですから、別に手放しで信じろみたいなおこがましいことは申しません。信じるも信じないも皆さまの自由です。ってか、世間さまの説とはあまりにもかけ離れてるので、にわかには信じがたいってのが普通かもしれませんけどね。

 ということで、じゃあ、とりあえず、伝世品と対比できる青手の方からにしときますか。分からないことだらけですけど…。

 だって、青手と言えば、そもそも何であんなに器面全体を塗り埋めたのかってことすら、昔、昔から世間で問題になってましたが、一向に合点のいく説明に出会ったことがありませんから。まあ、一番ポピュラーな説は、「素地の汚さを隠すため」ってやつでしょうか。たしかに山辺田窯跡の青手の素地は、鉄分が多く灰色がかっているものが多いのは事実です。

 でも、それって一見的を得ているように思えますけど、よくよく考えると変じゃないですか?だって、同時期に作られている白磁を素地とする五彩手だって、同じ質の素地を使ってるんですよ。そっちはなぜ隠さなくていいんですか?それに、青手の伝世品見たら分かりますが、種類によっては、素地が乳白色に近くメチャクチャ白いのがありますよ。文様の一部を白抜きして、まるで白絵の具塗ったような表現になってるのだってあるくらい。そんなもん、別に素地を隠さねばならぬ必然性がないでしょ。

 そもそも、他に白磁の色絵素地大皿を焼いてる窯場としては、丸尾窯跡を含む外尾山や山辺田窯跡と同じ黒牟田山の多々良の元窯跡、広瀬山なんかもあります。青手かどうかは分かりませんが、猿川窯跡なんかでも白磁大皿を焼いてますね。灰色のものもなくはないけど、結構素地白いですよ。たぶん多くの方は山辺田窯跡の製品を念頭にされてますが、灰色のもんの割合は山辺田窯跡が一番高いでしょうね。ですから、私的には素地汚いから塗り潰しちゃおっ説は却下です。

 ということで、こっからが妄想のはじまりです。妄想説では、青手ってもんは、もともと古染付・祥瑞系の技術の影響で誕生したもんだって考えです。例のアレですよ。五郎七さんのアレ。ここでも何度も取り上げた鍋島報效会のやつ。手本とした中国の祥瑞大皿は、内面緑絵具で塗り潰してるのに、その時分有田はまだ技術的に未熟で、残念ながら塗りつぶせなかったのではってことを以前話しましたよね。すごく悔しかったはずですよ。その後、五郎七さんだか副田喜左衛門さんだか知りませんが、景徳鎮の祥瑞に追いつけ追い越せって切磋琢磨した成果が青手?

 青手って、全体を塗り潰して、その上これでもかってくらい地文でビッシリ埋め尽くすわけですよ。地文と言えばやっぱ祥瑞でしょ。だって、南京赤絵系は、むしろ余白が命みたいな技術ですし、万暦赤絵系は…、百花手なんかのことですが、たしかにびっしりとは描くけどむしろ草花文で埋めるって感じですからね。ほかにも古染付・祥瑞系を疑う要素はいくつかあるんですが、それは追々お話ししていくことにします。

 ということで、次回からは、ちょっと具体的に、青手の話をしてみたいと思います。(村)

このページに関する
お問い合わせは
(ID:321)
ページの先頭へ
有田町役場 文化財課

〒844-0001 佐賀県西松浦郡有田町泉山一丁目4番1号

電話番号:0955-43-2678

FAX番号:0955-43-4185

© 2024 Arita Town.