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有田の陶磁史(223)

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 前回は、単純に時間軸での変化を想定した様式分類に、窯跡などの出土資料を当てはめるのはムリムリってことなどを話してました。だって、各様式が時間軸とともに一列に並ぶって建前で様式分類ができあがっているわけですが、実際には、相対的に下級品ほど、原則的に古い様式の要素が多く残されているので、同じ時期に複数の様式が並立することになるでしょ。だから、もっぱら伝世品を扱う人には、下級品ほど古く見えてしまうという傾向があります。ようするに、高級品も下級品も同時期に割り振ると様式的に矛盾するし、古い要素が多いからって下級品を旧様式の方に押し戻すと、時間軸上矛盾するって、どうにもこうにもならない矛盾にさいなまれるのです。

それから、“初期伊万里様式”や“古九谷様式”のように、外部からの技術導入で成立した様式の場合、単純に新旧の構成要素の割合の多い方の様式に区分するという方法は成り立たたないってことも話してました。一つでも新しい要素が加わっていれば、旧様式にはない要素ですから、原則的に新様式に分類せざるを得ないわけですから。

これって、伝世品では問題があまり顕在化しませんが、本当に窯跡の出土資料の場合なんかでは、困ることがあるんです。というのは、伝世品の場合は、普通は商品として消費者に届けられたものですから、それ自体原則完成品です。ところが、窯跡の出土資料の場合は、必ずしもそうとも言えないのです。

分かりやすい例で説明しましょう。たとえば、窯跡で“初期伊万里様式”の白磁皿が出土したとします。さて、これは何様式でしょう?今、質問の意味が分からず読み返しました??あらためて、さて、何様式でしょう?そうです、当然“初期伊万里様式”ですね。決してボケたのかとは思わないでください。まだ続きがありますので。これが、完成品として、白磁として出荷された場合は、そのまま“初期伊万里様式”です。ところが、白磁などの場合はことがあります。すると何ということでしょう。“初期伊万里様式”だったはずの皿が、たちどころに“古九谷様式”に化けてしまうのです。さて、には何が入ると思いますか?手品でも、マジックでも、イリュージョンでもありません。答えは“色絵を施す”です。

そんな空論を話してもとおぼしめしならば、本日の添付写真をご覧ください。「色絵牡丹文手塩皿」です。蛇ノ目高台の素地は白磁で、素地だけなら正真正銘の“初期伊万里様式”です。でも、色絵ですので“初期伊万里様式”には区分できません。ただ、“古九谷様式”かと言えば、昔はそうでしたが、今の認識ではちょっとムリかなあ。まあ、この点はまた別の問題なので、複雑になるため今日は触れませんが、とりあえず、“初期伊万里様式”でないことは確かです。つまり、こういう現実が実際に起こるのです。しかも、登り窯跡で出土した時点では、白磁で出荷するものか、その後色絵を施すものなのかは判別できませんし、同種の素地を両種の製品として出荷する場合もあります。いかがです。何とも割り切れないモヤモヤした気分になるでしょ。でも、これが現実なのです。

というわけで、本日は1ミリも話は進みませんでしたが、思い付きで書き出すと止まりませんので、何とぞご容赦ください。(村)

 

Photo:色絵牡丹文手塩皿

 

 

 

 

 

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