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中樽一丁目遺跡の“鍋島”

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今回熊本県を中心に襲った大地震は、いまだ終息の見えない状況が続いていますが、まずは、被害にあわれた皆さまに対し、心よりお見舞い申し上げます。

有田もずいぶん揺れましたが、大きな被害はなかったようです。こういう時には、何の変哲もない日々の生活を送れることがいかにありがたいことか、あらためて痛感させられます。

さて、今日も中樽一丁目遺跡の出土資料を一つ紹介いたします。これまでは山小屋窯跡の製品を紹介してきましたが、今回はちょっと目先を変えて、有田ではない産地の製品です。

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写真は、いわゆる“鍋島”と称される尺皿で、口径が35cm近くもあります。内面と外面胴部に松竹梅文が描かれており、高台の外側面には櫛目文が巡らされています。櫛目文は輪郭線を描いてその中を塗るタイプではなく、後期の製品に通有な、筆で一本線を描くタイプです。内面に同様な松竹梅文を描く伝世品はいくつか知られていますが、外面にも松竹梅を配したものは、これまで見たことがありません。

鍋島は、一般的に将軍家や大名などへの贈答用として、佐賀藩が伊万里の大川内山にあった御道具山で作らせたものと考えられています。よく、鍋島藩窯などと通称される窯場のことです。もちろん贈答を目的とした製品ということは間違いないでしょうが、なぜ大名家などとは無縁の有田に、しかも窯焼きの工房跡の遺跡にあったのかが謎で、いまだ合点のいく答えが見つかりません。

この皿はほかの有田の多くの磁器といっしょに土壙に廃棄されていたものですが、この土壙から出土する製品は、ほぼすべて二次的な火熱を受けた痕跡が残ります。層位的に、これは有田の内山全体が焼失した文政11年(1828)の大火によるものと考えて間違いありませんので、生産年代の下限もそれ以前ということになります。おそらく、1800年前後頃のものではないでしょうか。(村)H28.4.22

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