今回ご紹介するのは、中樽一丁目遺跡から出土した染付小皿で、内面には簡素な山水文が描かれています。生産時期はおおむね1640年代後半頃と考えて間違いありませんが、製品としては蛇ノ目高台ということはあるものの、別段珍しいようなものではありません。
ただ、この皿の場合は、窯詰め技法がちょっと変わっています。写真では見込みと畳付に、それぞれ4つの豆粒大の楕円形のものが付着しているのが見えるかと思います。これは磁器質の粘土を丸めたもので、目積みして重ね焼きした際の目が残ったものです。同じ文様の皿はほかにもいくつも出土していますが、すべて目積みの痕跡が残っており、内外面に目跡が残るため、最低3枚以上は重ねて窯詰めしたことが分かります。
この時期にはすでに目積み自体が珍しいのですが、1630年代以前の目積みが一般的であった時期でも、磁器質の胎土目の例はさすがに皆無です。もちろんほかの文様の皿には見られないので、試しにやってみただけということかもしれません。生産地では、こうした試行錯誤の結果、流行しなかった技術や技法を用いた製品が出土することもあります。(村)H28.5.20