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有田の陶磁史(226)

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 前回までに、様式分類に関して、“初期伊万里様式”“古九谷様式”などのように新技術・技法が加わって完成した様式については、“一つでも新要素が加われば、原則、新様式に区分しないといけないの法則”が成り立ち、“柿右衛門様式”“古伊万里様式”などのように改良や洗練“によって成立した様式は、“エイヤーッ理論の法則”で分けるってことについてご説明いたしていました。ただし、相対的に高級品の残りやすい伝世品については比較的適用が可能ですが、発掘調査資料についてはちょっとねってことでした。

 本日は、残りの“鍋島様式”についてですが、ほかの様式と違って、分けること自体は比較的容易な場合がほとんどです。皿に関してはですけどね。ほかの器種はちょっとコツがいりますが、皿が圧倒的に多いので、説明を複雑にしないために、ここでは皿の話をします。ただし、比較的簡単な皿の場合でも、別の観点で、気を付けておかないといけないことがあります。

 “鍋島様式”というと、少しでも陶磁史をかじったことのある方でしたら、「将軍家などへの贈答用に作られた、民窯製品とは異なる独特なスタイルの製品の様式」だということはご存じかと思います。下に掲載したように、いわゆる木盃形を呈して、高台が高くて、高台の外側面に櫛目文をはじめとする塗り潰し文様を巡らし、外側面には七宝繋文ほかの民窯では使わない独特な文様が描かれます。高台内に銘は入れず、ハリ支えもしません。また、色絵の場合は、文様の輪郭は染付で縁取ります。こういう独特なスタイルですから、ほかの様式と違って、これは簡単ですね。これが見分けられないわけがありません。

 そう思うでしょ?たしかに、比較的見分けるのは簡単なものがほとんどです。でも、この様式の場合は、先ほど、“贈答用”“独特なスタイル”という話をしましたが、実はこれがくせ者で、さっきの説明に違和感がなかったら、逆に、もしかしたら“鍋島様式”について、混乱されているかもしれませんので、お気をつけあそばせ。

 さて、何のことでしょうね?では、別の尋ね方をしてみましょう。“鍋島”“鍋島様式”の違いって何でしたっけ?これでピンッとこられた方は、なかなかのものです。別に“鍋島”に限ったことではありませんが、「様式」の付く付かないの違いは、製品のスタイル別か生産地別かって話をしてきたと思います。ということは、先ほど記した「将軍家などへの贈答用に作られた、民窯製品とは異なる独特なスタイルの製品の様式」という説明の内、前半の「将軍家などへの贈答用に作られた」という部分は御道具山(藩窯)製品ということで“鍋島”の定義、後半の「民窯製品とは異なる独特なスタイルの製品の様式」という部分が“鍋島様式”の定義だということになりませんか?

 つまり、言い方を変えれば、前者は御道具生産制度に則った製品ということで「生産制度上の鍋島」、後者は製品の様式による「製品スタイル上の鍋島」とも言えます。でも、結局は一つの製品が両方の要素を備えるということで同じでしょって突っ込まれそうですが、たしかに大半はそうです。でも、かといって必ずしもイコールでもないので、これが困ったもんなんです。

 その実例については、長くなりそうなので次回ご紹介してみたいと思います。(村)

鍋島様式の染付皿

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