前回は山辺田遺跡から出土した、1630~40年代頃の染付中皿をご紹介しました。ただ、よく考えると1点だけではなかなかその時代の特徴が分かりにくいと思いますので、今回からは4回連続で1630~40年代の中皿を掲載することにします。前回記したように山辺田の窯場では、この時期が最も良質な初期伊万里様式の製品を生産しており、文様も多彩で呉須の色調も濃いものが目立ちます。
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染付草花文中皿 |
写真の皿は、内面の一方に葡萄蔓草文だか草花文だか分かりませんが植物文様が描かれています。こういうアクセント的に一方に文様を描いてほかを余白として残すような構図は中国にはほとんどなさそうなので、和風の文様と言ってよいのかもしれません。
ちなみに、文様の右上あたりに赤みを帯びた穴が開いていますが、これは窯詰め後、窯の天井から夜露が垂れて空いた穴で、素焼きを行わない生掛けの特徴と言われていますが、本当のところはどうなのかは分かりません。ただ、素焼きしている製品にこうした例がないのは確かです。(村)H28.9.30