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山辺田遺跡の出土品(21)

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今回ご紹介するのは、山辺田遺跡で出土した大型の陶器の鉢です。残存部の径が約30cmほどもあり、もう少しで口縁部というところまで残っているので、おそらく、もともとは口径が40cm近くもありそうな、鉢としては有田ではあまり例のない大型製品です。ただ、大きい以外は、製品としては特に目立った特徴があるわけではありません。

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透明釉陶器大鉢     内面外面
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目部分の拡大 

残存部を見ると、器形的には、大皿とするには少し深すぎですが、口縁部を外側に折りぎみにした浅めの鉢といった形状で、内面は全体に透明釉(灰釉)が掛けられていますが、外面の下半部は露胎となっています。焼成具合はやや酸化ぎみで、釉薬が熔けきれておらず白濁した状態に仕上がっています。鉄絵などの施文もありません。

このように、製品としてはあえてご紹介するほどのものではないのですが、登り窯で焼く際の窯詰め方法が、有田の窯場の製品としてはちょっと特殊です。見込みの4か所に、白や黒っぽいザラザラした砂のような目跡が残っており、外面にも高台に近い胴下部にやはり4つの目の跡が残っています。内外面の目跡ともにほぼ同程度の間隔なので、同じような大型の鉢を複数枚重ね焼きしたことが分かります。

この砂のような目跡ですが、実は砂を団子状にして配置するいわゆる砂目と称しているものではなく、砂岩を目として用いたものです。有田では小溝上窯跡の大皿などでもたまに見られますが、他の窯場ではこれまでのところ例がありません。というか、有田の陶器を焼成した多くの窯場では、大皿の口径は30cmよりも小さいのが通例ですが、山辺田窯跡や小溝上窯跡のように、口径が40cm近い大皿などを焼成する窯場のみで見られる目積み方法という捉え方もできます。もちろん、小溝上窯跡でも、口径が30cmを切るような製品に用いられるのは粘土を団子状にした胎土目か砂目で、砂岩目の例はありません。

砂岩目を大皿などに用いる利点としては、石なので重量のある大型製品を重ねても潰れることがなく、砂目のように剥がしやすいことなどがあります。ただ重ねるのにちょうどよい大きさに割る必要があるため、胎土目や砂目と比べると、効率性の面では多少劣ることは否めません。そのため、大皿を多量に生産した武雄市の窯場などでは、胎土目の先端に砂を付けたいわゆる砂胎土目などが用いられました。

砂岩目は、神谷窯跡や一若窯跡など、やはり大きな大皿を生産した伊万里市の窯場などで多く見られる窯詰め方法です。その他、陶器皿の施文方法や藁灰釉の使用をはじめ、山辺田窯跡や小溝上窯跡には、藤の川内周辺など伊万里市南部の窯場との類似性が見られます。(村)H28.12.9

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