山辺田遺跡では、これまでにおそらく1,000点くらいの色絵磁器片が出土していますが、中には生産場所にしかなさそうな、ちょっと変わったものもあります。
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写真1a 黄色の上絵具が付着した大皿片(外面) | 写真1b 同(内面) |
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写真2a 葉文様の上絵が描かれた大皿片(内面) | 写真2b 同(外面) |
写真は、2点ともに色絵の大皿片で、染付を伴わない素地に上絵付けしたものです。ただ、上絵付けといっても、特にちゃんとした文様が配されているわけではなく、たとえば写真1の方は大皿の外面胴部に、単に黄色の絵具が垂れているに過ぎません。黄色く発色しているということは、赤絵窯で焼成した後のものであることは間違いありませんが、なぜこんな絵具の垂れただけのものを、あえて焼成したのかは分かりません。もちろん、内面にはまったく上絵付けの痕跡すらありませんので、ちゃんとした製品を焼成中に、同時に焼いた他の製品の絵具が何らかの原因で偶然に付着したということでもなさそうです。こういうものは、少なくとも商品として生産したものではなさそうなので、おそらく生産関連の遺跡くらいしか出土しないと思います。
写真2の方は、内面に色絵の文様が残っており、絵具の垂れただけのものに比べるとまだ製品らしくはあります。左端の葉の上絵具は剥落しているため色は不明ですが、その右側に黄色と青の葉が描かれています。ただし、何かの構図として成り立っているわけではなく、単に葉っぱの文様が並んでいるだけです。たぶん、上絵具のテスト用だったのではないかと思いますが、こうしたものも色絵磁器生産に関わりのある遺跡に特有のものではないでしょうか。
上絵具のテスト用の磁器片は、ほかにも赤絵町遺跡や幸平遺跡など、赤絵屋跡の遺跡ではそれほど珍しいものではありません。特にテストピース専用の素地があるわけではなく、通常の碗や皿などが転用されています。もちろんこうしたテスト用の器は、上絵付け関連以外では、有田の遺跡であってもほとんど例がありません。(村)H29.2.10