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山辺田遺跡の出土品(28)

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新しい年度がはじまりました。年度が変わったから何かが変わったってこともありませんが、やはりあれこれ締め切りに追われる3月と比べれば、気分的には少し楽かもしれません。とは言え、今年度もすでに難題は山積で、つかの間の気楽さなのは間違いないでしょうが。

さて、今回ご紹介するのは、口径約22cm、高さ6.6cmほどの青磁の鉢です。口径は7寸よりもやや小さいくらいなので、規格的には中鉢ってところでしょうか。

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青磁陰刻文鉢

見込みには、不鮮明ですが、おそらく牡丹獅子文と思われる印判が押されており、こういう種類の青磁では定番のひとつといえる文様です。その周囲には葉文の陰刻が施されます。外面は高台内の釉を蛇ノ目釉剥ぎしており、その上に銹釉が掛けられており、内外面全体に深緑色の青磁釉が掛けられています。

一般的な製品は、窯詰めの際にはトチンやハマなどと呼ばれる粘土製の焼台の上に乗せて、登り窯で高温焼成されます。この時、熱で釉薬が熔けて製品と窯道具が熔着しないように、あらかじめ製品の高台端部の畳付の釉は剥いでおきます。しかし、この青磁鉢の場合には畳付は施釉したままで、釉薬を剥いでいません。実は、この方が机やお膳に置いて使用する際には、接地面が釉薬でツルツルしているので、傷が付きにくくていいのですが、通常のトチンやハマといった焼台に乗せて焼くことができません。そのため、この鉢の場合は、窯詰めの際にチャツと称される碗状の焼台が用いられています。製品の蛇ノ目釉剥ぎした部分が、チャツの口縁部に接するように乗せて窯詰めするのです。釉剥ぎ部に銹釉は塗られていますが、ドロドロと熔ける釉薬ではないため、大きな影響はありません。ただ、よく見ると、うっすらと円形に灰白色のチャツの熔着痕が残っています。

こうした深緑色の釉薬を掛けて高台内を蛇ノ目釉剥ぎする製品は、実際には鉢はそれほど多くなく、むしろ大皿が一般的です。手本となったのは中国・浙江省の竜泉窯青磁ですが、有田の場合は、それが景徳鎮で模倣され、その影響を受けた可能性も高いかと思います。こうした高台内蛇ノ目釉剥ぎの製品は、1650年代に出現し量産されており、1660年代には見込みに印判を施すものが少なくなって、1670年代以降のものは釉薬の色調も淡く、蛇ノ目釉剥ぎした部分より内側の外底中央部が一段深く削られるようになります。

青磁の鉢や大皿類は、山辺田の窯場ではなぜかそれほど多く作られていませんが、近隣の多々良の元窯跡や広瀬向窯跡、丸尾窯跡、外尾山窯跡などで量産されており、猿川窯跡など外山に近い内山の窯場などでも生産が確認できます。実は、この青磁大皿と古九谷様式の色絵素地大皿の生産窯は重なっており、色絵大皿の生産の衰微とともに青磁大皿も激減しています。(村)H29.4.7

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