今回から、有田の窯跡シリーズとして始めてみたいと思います。
第1回は、「楠木谷(くすのきだに)窯跡」です。
所在地は有田町泉山1丁目にあります。史跡には指定されていませんが、調査により2基の窯跡が確認されている窯です。
発掘調査は、1986年度に九州陶磁文化館が、1991年度と1993年度に有田町教育委員会が主体となって調査を行っています。
報告書は、九州陶磁文化館が1987年に『楠木谷窯・小溝上窯』を刊行、有田町教育委員会が1992年に『楠木谷窯・天神町窯・外尾山窯』を刊行しています。
調査により確認された1号窯跡は、上部の3室が遺存しており、それ以下は未確認ですが、部分的に遺存している可能性はあります。全体的に宅地や畑として削平され、段になっています。2号窯跡は、1号窯と同様に上部4室が遺存、しかし、下部については宅地や道、畑として削平され壊滅していると思われます。
出土遺物の製品は主として中・小皿を中心に、型打ち成形の製品も多く、良質な製品と雑な製品の差が比較的明瞭です。1号窯からは高台内に「承応弐歳」(1653年)と書かれた製品が数点出土しています。1号窯は1640年代後半~1650年代中頃、2号窯は1650年代に操業していました。
調査から24年の今現在は、変わらず宅地と畑地で段になっています。窯体があった場所は、私有地なので入ることはできませんが、説明板が残っているので現地に行くと、およその地形がわかります。なお、有田町教育委員会が刊行している報告書については、現在在庫がありませんのでご了承ください。
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楠木谷窯跡遠景 | 楠木谷窯跡 |
(伊)H29.4.20