第3回は、「年木谷(としきだに)1号窯跡・2号窯跡」です。
所在地は有田町泉山1丁目にあります。史跡には指定されていませんが、1号窯からは調査により1基の窯体が確認されている窯です。2号窯については、未調査のため、場所のみ『肥前陶磁史考』に記される年木谷窯ということだけがわかっていますので、今回1号窯跡とともに紹介します。また、この窯の近くには、次回以降に紹介を予定しています年木谷3号窯跡が所在します。
年木谷1号窯跡遠景
年木谷1号窯跡の発掘調査は、1987年に九州陶磁文化館が主体となって調査を行っています。その成果を報告書として、1988年に『下白川窯・年木谷1号窯』を刊行しています。なお、本報告書については、九州陶磁文化館刊行のため直接ご確認ください。
調査により確認された窯体は、2室が確認されていますが、山崩れで深く埋まっており、詳細については確認された2室以外は不明となっています。現状としては、遺存の可能性は高いですが、地形の変化が著しく実際に調査を行ってみないとわからない状態です。ただし、窯の左側にあったとされる物原については道路により寸断されています。
出土遺物の製品は主として、磁器製品で特に染付碗が出土しています。その他にも、白磁や鉄釉のかかった銚子が出土しています。窯道具はトチン、ハマ、ボシ、シノ、チャツが出土しており、窯詰めには逆台形のハマや、極真焼用のボシも出土しています。
推定される年代は、1778年から19世紀に操業していました。
年木谷2号窯跡付近
年木谷1号窯跡の調査から30年たちましたが、調査を行った箇所は現在も、畑地や山林のままです。窯体があった場所は、私有地なので入ることはできませんが、説明板が残っているので現地に行くと、窯体のあった場所と方向がわかります。ただし、今の季節ですと写真のとおり草木が生い茂っているので、若干確認しづらいです。2号については標柱が立っているだけですが、標柱があるのでその場所はわかります。
(伊)H29.6.8