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山辺田遺跡の出土品(34)

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前回は古九谷様式の草花文の染付小皿をご紹介しました。今回も同じ古九谷様式の染付小皿ですが、ちょっと毛色の違う製品です。
前回の草花文染付小皿は、古九谷様式には違いありませんが、素地の質や高台の調整方法など、初期伊万里様式的な要素が含まれていました。山辺田の窯場の製品では、実は、染付製品の場合は、むしろこうした新旧の技術が混在するタイプが一般的です。もっとも、古九谷様式の製品としては色絵の大皿を主体に生産しているため、染付小皿自体、数が多いわけではありませんが。

ところで、こうした初期伊万里的な要素の混在する古九谷様式の製品を、初期伊万里様式ではなく、古九谷様式に含めるべき理由はどこにあるのでしょうか。一般的に肥前磁器の様式は、「初期伊万里」、「古九谷」、「柿右衛門」、「古伊万里」などに区分されていますが、前半期の「初期伊万里」、「古九谷」と後半期の「柿右衛門」、「古伊万里」は、別の視点で捉える必要があります。「鍋島」はどうなるって突っ込まれそうですが、話しがもっと複雑になるので、とりあえず、ここでは割愛します。

前半期と後半期の様式の最大の違いは、中国系の技術を直接導入しているかどうかの差です。初期伊万里様式の成立、つまり、磁器が成立する際には、おそらく中国の福建省や広東省など南部の技術だと思いますが、有田の陶工の持つ朝鮮半島の技術を補完する目的で、少しだけ技術が導入されています。また、古九谷様式の成立に際しても、景徳鎮系の技術が導入されています。つまり、外部からまったく新しい技術を取り込んで成立したのが前半期の様式です。一方、後半期の柿右衛門様式や古伊万里様式は、中国的な要素を模倣という形で取り入れながらも、内部における技術の自主改良によって完成した様式です。つまり、外部の新たな技術の導入を伴いません。
この違いは、様式としての区分上、どのような影響があるでしょうか。少し頭の中を整理して考える必要があるかもしれません。

まず、外部から新しい技術を導入して成立する様式の場合ですが、この場合は、従来の技術内には含まれない技術的要素が、突然、その中に付加されることを意味しています。最も分かりやすい例としては、初期伊万里の成立期には磁器質という要素や染付の使用という要素が加わりますし、同様に古九谷の成立期には色絵という技法が加わります。まだまだありますが、省略します。こうした新しい技術的要素は、従来の様式にはなかったものなので、原則的に、たとえ製品の一部であろうが、そうした要素が加わった製品は、新しい様式の製品ということになります。初期伊万里風の素地を用いた色絵製品などは、その典型例です。色絵の技法は古九谷様式を構成する技法の一つとして開発されたものなので、これを色絵の技法のない初期伊万里様式の中で捉えようとすると、様式の概念自体に矛盾が生じることになるのです。

一方、後半期の柿右衛門様式や古伊万里様式の場合は、外部からの技術導入を伴いませんので、現実的には、様式間の明確な線引きができないものも珍しくありません。たとえば、ある種の古九谷様式の改良によって柿右衛門様式が完成しますが、もちろん、起点である古九谷様式と終点である柿右衛門様式を比較すると、その様式差は歴然としています。しかし、従来の技術の内部改良によって漸次変化するものなので、様式間の線をどこに引くかは個人の感覚によって異なってしまいます。しかも、必ずしもどの線引きが正しいかなど、択一的な答えのあるものでもないのです。

ということで、本日の製品です。図1は、内面に染付で丸文が描かれた小皿です。同時に型打ち成形で唐草の陽刻文も内面全体に残っています。口縁部がないので口径は不明ですが、残存部の径が12cmほどなので、おそらく口径は14cm程度かもしれません。その割に高台径はかなり大きく、9.5cmほどもあります。外面は、胴部に草葉文が描かれ、高台の付け根に二重圏線が巡らされています。また、高台内には高台の付け根に一重、その内側に二重の圏線が残っています。高台は三角形に近い形状で、畳付は両角も削られ丁寧に処理されています。また、器壁も薄く均質で、ちょっと景徳鎮磁器を思わせる硬い感じの触り心地です。
この小皿の場合、製作技術的には、山辺田の窯場の早い段階の色絵素地と共通しています。たとえば、高台内の二重圏線は早い段階の製品に共通する特徴ですし、しかも、高台内直下の一重圏線は、ほぼ山辺田製品だけに限定されるものです。さらに、高台外直下に二重圏線を巡らすだけで、腰部には圏線を入れないのも早い段階の特徴です。

山辺田の窯場の古九谷様式は、当初は色絵製品専用の技術として開発されたものと考えられます。そのため、古九谷様式の色絵大皿は多量に生産されていますが、同時に量産されている染付大皿は初期伊万里様式ばかりで、古九谷様式の例はありません。
とは言え、今回の小皿のように、技術的な混濁のないバリバリの古九谷様式の染付製品もなくはないということです。もちろん例外的な製品で、高台内直下の一重圏線がなければ、伝世品があっても山辺田製品だとは判別できないと思います。このように、一般的な認識では推し量りにくい、例外的なものも出土するのが、生産遺跡らしい特徴とも言えます。(村)H29.6.9

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図1 染付丸文小皿

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