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有田の陶磁史(6)

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今回は、肥前の窯業と最も関係の深い、朝鮮半島のやきものの分類について記したいと思います。朝鮮半島では、「土器」も「陶器」も「磁器」もあります。「磁器」は「瓷器」と表記される場合もあり、「磁器質」の「磁器」だけを指すわけではなく、中国の「瓷」の方により近い範囲なので、「瓷器」の方が適切かもしれません。ただ、今回は説明しませんが、日本で「瓷器」と言えば別の意味もありますので、ここではとりあえず、馴染みのある「磁器」と表記します。

何だか得体の知れない「炻器」を除く、「土器」、「陶器」、「磁器」の3分割なので、日本的な感覚でもあまり違和感はありません。ただ、日本とは少し割り方が違っています。李朝時代の製品では、壺・甕類と粉青沙器と称される日本でいう三島手・刷毛目などは「陶器」になります。ここまでは日本と同じですが、たとえば唐津焼で一般的な無文や鉄絵を描くような灰釉製品などは、「陶器」ではなく「磁器」になります。つまり、「磁器質」であるかどうかは関係ありません。同じ技術で作られても、窯場の近くで採取される原料の質によって、「陶器質(炻器質)」や「磁器質」になるし、中間的なものもあるので、胎土の質で分けるというのは現実的ではないのです。日本では、「磁器」は陶石、「陶器」は粘土を原料とするというまことしやかなウワサがありますが、あれは単なる錯覚です。陶石だけではなく、粘土を原料とする「磁器」もあります。

「陶器」である粉青沙器の技術は、李朝より一つ前の高麗時代の青磁、象嵌(ぞうがん)などで知られる、いわゆる高麗青磁を源流としています。高麗青磁も「磁器質」とは限りませんが、それが陶器化したものが粉青沙器という捉え方です。一方「磁器」の方は、主に景徳鎮の枢府(すうふ)白磁を意識した、李朝時代にはじまる硬質白磁を源流とします。つまり、技術の違いによって「陶器」と「磁器」は区分されており、この「磁器」の技術を源流とするものがいくら質的に陶器化しても、「磁器」は「磁器」なのです。
よって、朝鮮半島の場合も、中国と同様に、「磁器質」であることが「磁器」に分類されることの必須要件ではありません。(村)H29.8.25

図1_1図2_1
韓国の粉青沙器韓国の白磁
図3_1 
韓国の粗質な白磁(常白磁)
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