文字サイズ変更 拡大標準
背景色変更 青黒白

有田の陶磁史(8)

最終更新日:

何度かに分けて、肥前の近世窯業に関連しそうな各国のやきものの分類について、お話ししてきました。ちょっと難しかったかもしれませんね。いや、中身自体はさほど難しい話しではないんですが、現代的な分類基準をよく理解されている方ほど、頭の中で矛盾が矛盾を生んでしまったはずです。何しろ、現代の日本の分類は、東洋と西洋をパワープレイで無理やり合体させたものなので、各やきものの概念と実際の製品がみごとなくらい合致しませんので。この分類シリーズの最後ということで、ここで少しまとめておくことにします。

現代の日本では、やきものの分類は、「土器」、「陶器」、「炻器」、「磁器」の4分割が一般的です。この4つは、広辞苑的説明にあったように、主に胎土などの性質によって区分されており、原則的に土器から順に高温焼成で硬くなるイメージがあります。また、土器や陶器は吸水性がありますが、炻器や磁器はありません。さらに、磁器は透光性がありますが、ほかはありません。と、いうのが建前です。ところが、こうした質重視の分類は、明治になって、ヨーロッパ、主にドイツから導入された概念で、それ以前は、「土器」と「陶器」という2分割だったわけです。なので、現代のやきものでもやや曖昧ですが、それ以前の日本のやきものがきっちりと選別できるはずもありません。もともと違うルールによるもので、新しいルールどおりに作られているわけではありませんので。

たとえば、各やきものの境界を見ればよく分かります。土器と陶器の境界ですが、柔らかいのが土器、硬いのが陶器ならば至極簡単ですが、焼成温度が低く、胎土の質的には土器であっても、日本では、釉薬が掛けられれば原則陶器の仲間です。

陶器と炻器の間は、もっと曖昧です。もともと日本では、土器でないものは陶器だったわけですから、陶器は広範に渡ります。陶器質であるものはともかく、炻器質のものも陶器だったのです。たとえば、唐津焼。多くは李朝の白磁の技術に連なるものですから、質的には、大半は硬質だけど胎土が有色の炻器質です。ただ、これを現代でも炻器として扱うことは、ほとんどないと思います。もともと陶器というジャンルの製品として作られているからです。お話ししたように、日本においては、分類区分としての炻器は実在しても、実体としての炻器はほとんどないのです。

炻器と磁器の間も、なかなか複雑です。ヨーロッパなどでは、龍泉系の青磁などは、磁器ではなく、炻器として取り扱います。磁器とはヨーロッパ磁器の開発者であるヨハン・フリードリッヒ・ベトガーが完成させた、染付などに象徴される硬質で胎土が白色の景徳鎮風磁器のことなので。ところが、日本ではこのヨーロッパ的概念が導入される以前から磁器を使用していますので、中国から輸入される青磁なども磁器の仲間なのです。しかも、それを模した、あるいは影響を受けた日本の青磁なども、当然のことながら磁器なのです。つまり、炻器というジャンルの場合は、陶器だけではなく、磁器の中にも該当するものが含まれていることになります。というか、これでお分かりいただけるとおり、あえて炻器という区分はなくとも、日本のやきものの場合はすっきり分けられてしまうのです。

ただ、これですべてすっきりかと言えば、ある意味語弊があるかもしれません。いや、大いにあります。お話ししたとおり、中国風磁器の場合は、胎土は磁器質でなくとも、磁器の中に区分されます。それを模した日本製品も同様です。ところが、源流は李朝の磁器であるはずの唐津焼は、磁器ではなく、陶器に分類されます。何となくすっきりしません。それどころか、中国の方にも例外があります。たとえば、鉄釉を掛けた天目茶碗。日本でも、近世より前から瀬戸などで作られています。でも、瀬戸の天目茶碗を磁器に含めることは絶対にありません。

これには、カラクリがあります。日本の場合は、唐津焼がはじまった後に、伊万里焼という日本初の磁器が完成しました。よって、それ以前に磁器があってはいけないのです。細かく説明するとさらにややこしくなるので、この辺でやめときますが、とりあえず、日本の場合、おおむね中国磁器の技術や影響で作られているものは磁器であり、たとえば李朝風などそれ以外のものは、磁器質であることが磁器に分類する必須条件になります。(村)H29.9.8

このページに関する
お問い合わせは
(ID:971)
ページの先頭へ
有田町役場 文化財課

〒844-0001 佐賀県西松浦郡有田町泉山一丁目4番1号

電話番号:0955-43-2678

FAX番号:0955-43-4185

© 2024 Arita Town.