第29回は、「多々良2号(たたらにごう)窯跡」です。
所在地は有田町黒牟田です。史跡には指定されていません。

多々良2号窯跡遠景

多々良2号窯跡は、有田町教育委員会が調査主体となり、1989年度に発掘調査が行われています。その後、1990年に『一本松窯・禅門谷窯・中白川窯・多々良2号窯』が有田町教育委員会より刊行されています。
調査を行ったところ、窯跡なのか文献に登場する多々良の元D窯跡の遺物の散布地なのか、はっきりした結果は出ませんでしたが、物原の一部と考えられる土層が検出されました。しかし、多々良の元D窯跡で出土している遺物は出土しておらず、多々良の元D窯廃窯後に稼動していた、別の窯の可能性が考えられます。

出土遺物は、そのほとんどが物原層から出土していますが、検出した土層も物原のごく一部なので、量的には少なく、磁器の皿が主体で、他に碗、鉢、瓶、香炉が出土しています。他に銅判刷りの製品が出土しています。
多々良2号窯については、安政6年(1859)の古地図や元治元年(1864)の絵図にも記録は残っておらず、調査前の聞取り調査において、戦後の昭和20年代まで使用されていて、それが現在の工場の位置にあたるということでした。

多々良2号窯跡説明陶板

多々良2号窯跡は、前回紹介した多々良の元窯跡に近接した西側に所在しています。窯跡を示す標柱と説明陶板が建っていますが、私有地内ですので近隣の方の迷惑にならないようにお願いします。また、草の生い茂る季節は、標柱も隠れているかもしれません。なお、有田町教育委員会が1990年に刊行している報告書については、現在在庫がありませんのでご了承ください。（伊）H30.6.7