第32回は、「小溝中(こみぞなか)窯跡」です。
所在地は有田町南原です。史跡には指定されていません。
小溝中窯跡
小溝中窯跡は、有田町教育委員会が調査主体となり、1987年度に発掘調査が行われています。その後、1988年に『小溝中窯・小溝下窯・清六ノ辻1号窯・清六ノ辻大師堂横窯』が有田町教育委員会より刊行されています。
発掘調査で確認された窯体は1基で、10室が確認できました。窯上部は比較的良好な状態で検出でき、窯下部については、堤を作る際に削平され壊滅状態と考えられます。
遺物は、陶器と磁器が出土しており、陶器は灰釉の碗、皿、小杯、火入れ、片口鉢、鉄釉の碗、片口鉢、無釉の甕、壺、磁器は染付の碗や皿、白磁の皿や小杯が出土しています。大形の製品は無く、皿は陶器も磁器もともに砂目積みをしていました。窯道具はほとんどがトチンで、いくつか焼台も出土していました。出土した遺物から、小溝下窯跡同様に1610年代~1630年代の操業と推測されます。
小溝中窯跡の近隣には前回ご紹介した小溝下窯や、次回紹介予定の小溝上窯が所在しています。小溝下窯跡同様、近くには標柱や陶板が建っていますが、私有地や溜池の近くにあり、容易には見つけることが難しいかもしれません。また、草の生茂る季節には標柱等も隠れているかもしれません。現地を訪れる場合は十分に気をつけてください。なお、発掘調査報告書については、有田町歴史民俗資料館において取り扱っておりますので、お問い合わせください。(伊)H30.7.26