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有田の陶磁史(354)

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  前回は、1650年代後半から60年代初頭の内山の窯業の再編に起因する窯場全体の大シャッフルのことに関して、なぜか、じゃーライバルに成長する可能性を秘める波佐見とかはどういう戦略を取ったかって話になってしまいました。まあ、これで結果的に、有田に限らず、肥前窯業圏のすみ分けが完成したって話ですけどね。総合デパートとしての有田があって、波佐見やそれから準大手では三川内とか、そういうところが下級品に絞った生産に特化することによって、磁器の需要層のすそ野を下へ下へとどんどん開拓していくわけですよ。それに、窯が1、2基程度しかない零細の産地がすき間を埋めていくって構造かな。ということで、つまりは、中級品以上は有田が独占って構図です。

 ついでですから、有田の中での勢力図についても、もうちょっと俯瞰的に説明しとくことにしましょうか。産業という意味での中核地は、もちろん内山地区です。製品ランク的には、その上に南川原山や大川内山の一部もありますけど、そんなもんは、大げさに言えば、研究所みたいなもんです。南川原山なんかで新製品開発の研究をして、やっと実ったなって思ったところで、内山で技術を増幅、増産させて、その中でより広い階層に落とし込める可能性があるものをピックアップして下級品の山なんかで量産する。そんで、その内山と下級品生産の山の間を途切れなくするために繋ぐのが中級品生産の山で、だから、逆に中級品生産の山の製品には、あんまり個性ってもんがないんですよ。上はほぼ内山と同等なもんだし、下は下級品の山の製品と似たようなもんだし、特に中級品と言えばこれってもんがない没個性的な感じかな。

 最高級品って意味では、南川原山だけでなく、大川内山の一部もあるんですが、ありゃ、ちょっと内山なんかのコンセプトに沿って量産ベースに落とし込もうとすると、古染付・祥瑞系古九谷がベースなので、技術の中身がちと複雑なので難しいでしょうね。染付製品では手数が多くなるし、色絵だと染付と上絵の組み合わせが原則なので、前に何かで話したように、窯焼きと赤絵屋の間で供用する設計図が必要になりますからね。

もっとも、いや技術以前に、藩窯製品だから模倣できなかったん…じゃないって言われそうですけどね…??だって、有田の岩谷川内山の藩窯の技術が移転して、大川内山の日峯社下窯跡が藩窯として築かれたみたいな話に、現在では世の中のジョーシキとしては、なってるんでしょ?いや、もちろん、岩谷川内山の技術が移転して、大川内山に窯場が開かれたってこと自体にサラサラ異存はございませんよ。でも、技術が移ると、必然的に藩窯まで移ることになるんですかねぇ〜??少なくとも文献史料なんぞには、藩窯が岩谷川内山から直接大川内山に移ったなんて記したもんはありまへんで。

でも、日峯社下窯跡で鍋島様式の製品が出土してるじゃんって言われるとお察ししますが、岩谷川内山に鍋島様式の製品があって、引き続き大川内山でもそれが作られたってのなら分かるんですけどね。残念ながら、岩谷川内山には鍋島様式の製品はないんですよ。それに、そもそも日峯社下窯跡に鍋島様式の製品があるからと言って、それが御用品であったってエビデンスはどこにあるんでしょうか??まあ、南川原山製品と並んで一番の高級品ですから、御用品として使われた可能性は高いとは思いますよ。でも、少なくとも当時から鍋島様式が御用品の専用様式であったなんてことは誰が決めたんですかね??ということで、今のジョーシキとやらは、あまりに???が多すぎて、凡人には到底理解が及びませんわ。

これって、多分に「藩窯」って用語に、脳ミソが引っ張られてるような気がするんですけどね。「藩窯」って言えば、藩が1つの窯を直営していたようなイメージがありませんか。でも、これって新しい造語ですからね。本来の呼称は「御道具山」です。御道具、つまり御用品を焼いた窯場って意味です。御用品を焼いた窯場ですから、別に藩が窯全体を直営してなくてもいいわけですよ。もっと言えば、御道具を焼いた現場じゃなくて、御用品調達制度を担った役所があった場所って捉え方もできるわけです。だって、今だって何かの製品を発売している会社の所在地って、実際に物を作ってる工場じゃなくて、フツーは経営者のいる本社を示すでしょ。

 いや〜、いかんな〜。ちょっと鍋島に火が付いちゃいそうな予感…。大川内山は伊万里市だから管轄外なんであまり深入りしたくないんですが…。もっとも、もともと岩谷川内山から南川原山に移転して大川内山って言われてたのが、今では岩谷川内山から直で大川内山みたいになってきてるようなので、本当に南川原山を外していいんかいなって話はしとかないといけないかもですね。ということで、申し訳ありません。なかなか本題に戻れませんが、次回…、いや次回から…かな?御道具山についてちょっと触れとこうかと思います。(村)

 

 

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