前回まで、何で内山の地域がヨーロッパ向け製品の生産に適しているかって話をしてました。
よーするに、従来から輸出していた東南アジア向けだと、古い初期伊万里様式の技術の延長線上で製作可能ですので、当時だと生産可能な業者なんて、まだ山ほどいます。しかし、ヨーロッパ向けだと、ターゲット層が主に偉めの王侯貴族向けになりますので、技術としては、古九谷様式がベースってことになります。
ところが、お話ししてきたように、そもそも古九谷様式には3つの原形となる技術があって、古九谷様式ならどれでもえーわってわけにはいきません。最適なのは、楠木谷窯跡の南京赤絵系の技術で、ヨーロッパ好みの薄くて白いボディーが特徴です。この南京赤絵系の技術の影響がごっつ強いのが内山の地域で、なので、内山の地域で作れればベターなわけです。
しかも、最先端の工業製品ですから、数がこなせないといけません。なので、本当は喜三右衛門さんちとか、直接、楠木谷窯跡に関わった人たちならいいのかもしれませんが、個々の製品にあまりに手をかけ過ぎてたんじゃ量産品になりませんし、業者の人数も限られてますので、そんじゃ、これは別枠で本当の高級品だけ作らせた方が賢明ってことなんでしょうね。そうすると、やっぱ楠木谷窯跡に近い技術の窯場がギュギュッと集まっている内山の地域が最も適しているってことになるわけです。
この内山の地域から、内山基準に合致しない業者は外山に移動させ、域内の技術はフラットな状態にしつつ、なおかつ、上絵付け工程も分業化して、各業者の専門性も高めたわけです。上絵付けする赤絵屋に、あんまりバラバラの色絵素地を持ってこられても困るでしょ。やっぱシンプルな方が歩留まりだってよくなるはずですしね。
それにねっ。たとえば、これ100個とか一括注文受けたのはいいけど、できあがりの製品の質がバラバラってわけにはいかんでしょ。そこから、いちいちチェックが必要だったら、あまりにも生産性ワロシ。基準にパスしないからって、海外向けの嗜好に合わせたもんを、少々なら物珍しさもあって売れるかもしれませんが、大量に国内でさばくのはさすがにムリがあります。
もちろん、当時は手工業ですから、それなりの個体差はありますよ。でも、それは消費者の方も認めていて、つまり、工業技術の発展段階に応じて、同じって幅の基準が時期ごとに違うわけです。今だと型番いっしょの製品だと、見分けが付かないくらい同じですけど、今の工業力だと、消費者の方も、そうでなくっちゃ納得しないわけです。
もっとも、初期伊万里様式と古九谷様式だって、技術や製品としての完成度が違いますから、求められる精度の違いはあったはずです。つまり、初期伊万里様式と古九谷様式じゃ、同じってレベルが違うってことです。なので、東南アジア向けの染付製品なんて、質やら絵付けにメチャクチャ個体差ありますよね。有田だけじゃなくて、波佐見とか三川内とか、ほかの産地でも作ってるのでなおさらです。
その点、内山で作られている古九谷様式には、元よりそれほどの個体差がありません。それを、さらにフィルタリングして技術の平準化を図ってるわけですから、そもそも大きな個体差が生じる要因自体が排除されてるってわけです。
つーことで、なかなか進みませんね~。今回も、内山の利点の話に終始してしまいましたが、とりあえず、本日はここまで。(村)