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有田の陶磁史(435)

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    前回は、加賀藩邸内の長屋建物群の出土製品の中でも、中級品生産山の染付小皿についてお話ししているところでした。終わりませんでしたが…。

 先日お話ししたように、中級品生産山は、他のランクの山と比べて、ちょっと位置付けがビミョーです。これぞザ・中級品ってもんは比較的少なくて、いわば上ランクの内山と下ランクの下級品山の繋ぎ的な役割が大きい感じです。そのため、対象とするメインターゲットの需要層の幅が広くありませんので、個々の山に位置する窯場の数も多くありませんってか、17世紀後半だと外尾山には外尾山窯跡、黒牟田山に多々良の元窯跡があるだけです。

 余談ですが…、また余談??多々良の元窯跡は、たぶん17世紀後半には窯体は1つだけだと思いますが、外尾山窯跡は2~3基くらい並行して存在する時期もあるかもしれませんが、この窯場はなかなか正確な情報がつかめない難物の一つです。

 例の寛永14年(1637)の窯場の整理・統合以前に成立して、近代までずっと外尾山のメインの窯場として続くので、現在までに窯体は6基確認していますが(Photo1)、出土陶片の分布から見ると、まだ何基かはあるでしょうね。ちなみに、3号窯は物原の存在から窯跡があったことは確かなんですが、窯体を見つけきれませんでした。

 窯場として長く続いたところは、古い窯体の上に新しい窯体の物原が形成されたり、物原が埋まるとその上に新しい窯が築かれたり、古い窯体を削平して新しい窯体が築かれたりと、まあ、それでなくても想像以上に複雑で、地形などに合わせて、いろんなパターンがあります。

 ついでに、外尾山窯跡の場合は、丘陵上部(東側)を宅地開発のため造成してますので、高いところは削ったり、低いところは埋めたりしてますし、広く掘れるところはほとんどないので、なかなか正確な状況がつかめませんでした。

 それに、そうした発掘調査のテクニック上の難しさ以外にも、一つの遺跡として範囲登録された経緯に絡んで、難しさというか矛盾をはらんでいることもあります。というのは、有田の窯跡の場合、主に昭和期の踏査などによって窯跡の範囲が決められているわけですが、それとは別に一つの窯跡として括る際に重要な史料として活用されているのが、安政6年(1859)や元治元年(1864)の『松浦郡有田郷図』に描かれた登り窯です(Photo2)。少なくとも、これらの絵図の時期に存在した窯では、それぞれ描かれる窯を一つの遺跡の単位として括られているのです。

 たとえば、外尾山の場合には、絵図には隣接して本登(下側)と新登(上側)の登り窯が描かれています。本登が現在外尾山窯跡と呼ばれている窯跡で、Photo1では6号窯に当たり、新登が外尾山廟祖谷窯跡と命名されている窯跡です。つまり、この絵図の時点を起点として、現在の遺跡の範囲が決められているということです。

 では、この場合、この絵図よりも前に築かれて、絵図には描かれていない窯体の場合は、何窯跡として括ったらいいんでしょうか?外尾山窯跡は、お話ししたように窯場の整理・統合以前からの窯場ですので、絵図に描かれた登り窯以前の窯体が、あちこちに埋まっています。でも、廟祖谷窯跡の方は、新登として築かれた時点以降の範囲であり、たとえば、その新登の窯体の地下に古い窯体があったとしても、それは系列的に新登に直接繋がる窯体とは限りません。それよりも、外尾山窯跡を構成する一連の窯である可能性が高いでしょうね。つーか、廟祖谷窯跡が築かれる以前の外尾山には、本登と新登の別はなく、窯場としては外尾山登、つまり外尾山窯跡しかなかったわけですから、必然的に外尾山窯跡を構成する窯ってことになるわけなんですけどね。でも、廟祖谷窯跡の位置にあったら、何と呼べばいいんでしょうね?ってことになります。

 廟祖谷窯跡の位置はPhoto1では、2号窯のすぐ北側に当たり、ちょうど64・65mの等高線を示した位置が窯体です。発掘調査をしてないので、床下のことは分かりませんが、実際に、外尾山窯跡と廟祖谷窯跡の境目あたりにも焼土や陶片の散布が見られますので、あるかもしれませんね。

 こういう江戸後期の絵図を元に、現在の窯跡の位置が決められている例はほかにもいくつもありますが、やはり複数の窯跡が隣接する場合は、やっぱ発掘調査する時に困るんですよね。

 つーことで、本日は余談だけで終わってしまいましたね。でも、こんなことどこの活字にも書いてありませんので、ちょっとした豆知識ということで。ただ、知ってても何の役にも立たないとは思いますけどね…。(村)


 20261008Photo1

    Photo1:外尾山窯跡窯体分布図

    20261008Photo2

  • Photo2:安政6年『松浦郡有田郷図』(佐賀県立図書館蔵)


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