第112回 美術工芸品・オブジェ部門 受賞作品
1 位・文部科学大臣賞
赫い影(沢田 一葉)
2 位・佐賀県知事賞
彩泥線紋大鉢「風音」(宇佐美 成治)
3 位・有田町長賞
象嵌短冊文花器(吉澤 秀幸)
佐賀県陶芸協会賞
まえうみー有明の時(藤家 博美)
朝日新聞社賞
彩色長方鉢(小川 洋一)
熊本放送賞
OLTRE(レオナルド・バルトリーニ)
佐賀県商工会議所連合会賞
流氷(藤井 剛)
佐賀新聞社賞
白磁鉢「花匂う」(中尾 正三郎)
サガテレビ賞
裳(副島 信幸)
陶業時報社賞
彫文壺「せせらぎ」(赤塚 幸恵)
西日本新聞社賞
切り継ぎー廻ー(森山 寛二郎)
日刊工業新聞社賞
氷青磁鉢「氷塊I」(青木 昌勝)
日本経済新聞社賞
象嵌大鉢「晩秋」(立井 清人)
読売新聞社賞
釉層文深鉢(丸田 巧)
第112回 第1部美術工芸品・オブジェ 審査員紹介(50音順・敬称略)
- 石橋 裕史 (日本工芸会)
- 金子 賢治 (茨城県陶芸美術館長)
- 河合 徳夫 (日展会員・日本新工芸家連盟理事)
第112回 第1部美術工芸品・オブジェ 審査講評
第1部 審査長 金子 賢治
今回は立体造形に力のある作品がいくつか出品され、それが文部科学大臣賞(第1位)など四つの賞に輝いた。文部科学大臣賞の沢田一葉「赫い影」は、トルソを思わせるくびれのある形がやや斜行して作られ、頂点に鳥のような口形が開けられている。優美でかつ力強い形に、全面に掻き落としで微妙なニュアンスのある表面感情を作り出す。佐賀陶芸協会賞の藤家博美「まえうみ-有明の時」、熊本放送賞のレオナルド・バルトリーニ「OLTRE」、西日本新聞社賞の森山寛二郎「切り継ぎ-廻-」もそれぞれ土の構築のパワーと、土ならではの柔らかい抑揚のある形が魅力的である。
佐賀県知事賞(第2位)の宇佐美成治 彩泥線紋大鉢「風音」、有田町長賞の吉澤秀幸「象嵌短冊文花器」はそれぞれ新しい技法を駆使したあまりこれまでにない作風を見せている。「風音」はスポンジ・ダビングによってピンクや青による全く新しい色感を、「花器」は象嵌による全く新しいスタイルの文様を作り出している。
他の受賞作品では、小川洋一「彩色長方鉢」、青木昌勝『氷青磁鉢「氷塊I」』が新しい形の器を作り出し、立井清人『象嵌大鉢「晩秋」』はこれまでの仕事をよりスケールの大きな隅丸の角型に変化させている。副島信幸「裳」もまさに衣文のような褶曲を作り出すことによって、単なる壷形が、黒釉の深さとも相俟って、形への関心を強く主張する。同じく丸田巧「釉層文深鉢」も深く沈潜していく釉の変化と扁平に変化させた強靭なフォルムが連動する形への強い関心を披瀝する。
一方で中尾正三郎『白磁鉢「花匂う」』や赤塚幸恵『彫文壷「せせらぎ」』、藤井剛「流氷」は正統派の白磁の新風を作り出している。
全国公募になり、少しずつ新しい作家の新鮮な作品を迎えつつ、従来からの作家のたゆまぬ努力と進化。それをひしひし感じさせる112回展となった。
受賞作以外でも萩の若手や福岡筑紫、佐賀伊万里など、多くの作家が進化の後を見せる作品を作り出していることは確かである。しかしその歩みがあまりにも遅い、と感じさせる。中には10年以上もあまり進歩のない作品もある。それはある意味では退化である。日本で、世界で起こっている新しいさまざまな動向を敏感に反映し、もっともっと突き抜ける作品を見せてもらいたい。
第112回 第1部美術工芸品・オブジェ 入選・入賞者一覧
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第112回 第1部美術工芸品・オブジェ 県別出品数内訳
項目 | 山口 | 福岡 | 佐賀 | 長崎 | 熊本 | 大分 | 宮崎 | 鹿児島 | 沖縄 | 全国 | 合計 |
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出品者数 | 9 | 12 | 61 | 8 | 5 | 2 | 3 | 1 | 0 | 7 | 108 |
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(11) | (16) | (67) | (12) | (4) | (1) | (2) | (2) | (2) | (13) | (130) |
出品点数 | 12 | 15 | 65 | 8 | 5 | 2 | 3 | 2 | 0 | 8 | 120 |
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(14) | (18) | (70) | (12) | (4) | (1) | (2) | (2) | (2) | (14) | (139) |
( )内は前回分