ポスターテーマ【温故知新】
最優秀賞
川原 夕佳 さん
「温故知新」というテーマに沿い、たくさんの技術が集まって、つながり、1つの新しい作品ができるというイメージで描きました。昔の技術である焼きもののかけらの「べんじゃら」を伝統的な「金継ぎ」という技術でつないでいることを表しました。配色はカラフルにして、さまざまな人の個性が集まる陶磁展を表現しました。背景は、緑色の矩形が陶磁展が行われるこの“地”を表し、この“地”が水色の海をこえて広がっていく、多くの人に陶磁展を知ってほしいという願いをこめました。
優秀賞
山本 こころさん
今年のテーマが「温故知新」ということで今までの焼き物の歴史を知り、また新たに花が咲くというイメージで描きました。焼き物の皿を花に見立てて表現したので近くからでも遠くからでもこの絵を楽しめるインパクトのあるポスターにしました。花瓶は“故”を表していてハニカム構造を使って今に繋がっているという思いで描きました。背景の模様もまた焼かれる前のお皿だったり、円の重なりはろくろ台を上からみた時のイメージだったり隅々まで焼き物らしさを取り入れました。配色は今と昔をきっぱり区別して鮮やかに仕上げました。
湯村 明さん
焼き物の形を矩形で表現し、シンプルに仕上げました。赤の矩形は昔ながらの技術、青や黄色はそれを生かした新しい技術をイメージして描きました。色は遠くから見ても目立つように、鮮やかに、しかし色数は少なくしました。背景の色は、焼き物の形がしっかりわかるよう少しやわらかい色にしました。自分なりの「温故知新」が表現できたのでないかと思います。
吉冨 千穂子さん
「温故知新」というテーマに沿って、大きな壺の中に先人たちが作ってきた昔から今も残されているお皿の破片をデザインとしてたくさん描きました。破片の配色は、昔の陶磁器を表現したかったので、全体的に渋い色で塗りました。背景は、「有田国際陶磁展」が4~5月開催なので、鮮やかな黄緑にして、オレンジと水色の線は、春の暖かさと光をイメージして、壺の存在を強調させることができました。
審査員総評
審査長 畑石修嗣
今回のテーマは『温故知新』。
400年続く有田焼の伝統を踏襲しつつも新たな時代への挑戦を感じとることができる自由な発想で意欲ある作品が多く目に留まった。入賞・入選作品に関しては色彩、構成、バランス、コンセプトの表現力がストレートに伝わる作品が審査員の票を多く獲得した印象である。しかしながら、入賞・入選を逃した作品群に関してもテーマに沿った過去、現在、未来を作者各々が再解釈することで制作された作品のデザイン構成、色彩感覚等はとても表現豊かで作品としての完成度がとても高いことから、審査員の評価が分かれた作品が多くあった。
評価の決め手としては『温故知新』を感じつつ、尚且つ作品として訴えてくるメッセージ性を強くもっているかに審査の主眼を置いた。
この中で、グランプリを獲得した作品は、壺の形をしたレイアウトに「金継ぎ」をモチーフに伝統柄が構成されていた。伝統表現の組み合わせもしっかり考察されており、これまで伝統の配色パターンには無かった新たな配色パターンによって全体が構成されていたことで「温故知新」をストレートに感じつつも、丁寧に仕上げられた作品としてのインパクトが強かったことに評価が高かった。
「金継ぎ」は近年、世界的にも再評価を受けておりモノを大事に扱う文化として日本の代表的な伝統技法である。世界的にもSDGsの流れがある中、「金継ぎ」をモチーフの一つとしたこともメッセージの時代性を強く感じた。
第117回(2021年)ポスターコンクール審査員
- 窯業関係 有田陶交会 有限会社畑萬陶苑 畑石 修嗣
- 事務局関係 株式会社アルティア 朝重 貴光
- 陶磁展関係 佐賀県窯業技術センター 陶磁器部デザイン担当 江口 佳孝