概要
令和5年10月18日に締結いたしました「ESG分析を活用した有田町新国富指標の向上に関する包括連携協定」(以下、本協定)に基づき、有田町の「有田焼」(人工資本の一つ)に関する第一弾の分析結果が出ましたので、公表いたします。
今回の分析は、本協定の当事者である九州大学都市研究センター(センター長 馬奈木俊介)発のスタートアップ企業である(株)aiESG(アイエスジー)社が提供する包括的ESG評価AIを使用し、簡易分析を実施しました。
(株)aiESG社の提供する包括的ESG評価AIとは、国際機関や各国政府、業界が持つ膨大なデータを集め、AI(人工知能)を用いた評価基準です。温室効果ガス排出量、水や鉱物資源の消費量、賃金、児童労働、ジェンダー平等の項目について世界基準に照らした採点が可能です。この分析により、消費財としての「有田焼」の「調達→生産→販売」というビジネスモデルが、統計上どのような形で世界に波及していくのかを試算し、人間への影響を含む包括的なESG指標の試算を可能としたものです。
簡易分析の内容
モデルとなる有田焼を生産する窯元にご協力をいただきながら、下記3つのパターンで分析しました。
(1) 有田焼の分析
(2) 一般的な陶磁器の分析(国内)
(3) 一般的な海外の陶磁器の分析(ドイツ の マイセンと有田町が磁器のつながりで姉妹都市交流をしているためドイツと比較)
簡易分析の結果
有田焼、日本の一般的な陶磁器、ドイツの一般的な陶磁器のそれぞれに下記のような優位性がみられる結果がでました。
(1) 有田焼:創出営業利益、経済波及効果
(2) 一般的な陶磁器(日本):創出総売上総利益、創出税、低賃金、児童労働、強制労働、過重労働、差別と機会の平等、労災と死亡事故、ジェ ンダー平等、エネルギー使用量耕作地負荷量
(3) 一般的な陶磁器(ドイツ):創出減価償却、創出賃金、団結権など、職業上の有害物質と危険性、先住民の権利、GHG排出量、CO排出量、NOx排出量、SO2排出量、工業排水量
傾向
(1)日本の陶磁器は、「人権系」の項目やエネルギー使用量での優位性が確認できました。また、その中で有田焼は、創出営業利益や経済波及効果で優位性が高い可能性があることが見えてきました。
(2) ドイツの陶磁器は、「環境系」の項目や工業排水量での優位性が確認できました。
今後の展開
本協定では、ESG経営を実践するために、有田町の人的資本、自然資本、人工資本の価値増大を数値化し、検証することによって、有田町全体の価値向上を目指しておりますが、今回の簡易分析は、人工資本の一つである「有田焼」のESG評価を数値化することを目的に実施いたしました。
今回の簡易分析では、「有田焼」の大きな傾向をつかむことに成功したと言えます。
今後、さらに詳細な分析を進めるとともに、自然資本である「岳の棚田」に代表されるような「農業」の数値化について検証をすすめ、町全体としてカーボンオフセットの実現が有効に機能していくのかを確認してまいります。