白釉稜線浅鉢(ハクユウリョウセンアサバチ)【岡田 優】京都府
温かみと柔らかさのある陶器の白釉の作品に、ロクロ成形してすぐの柔らかい時に裏から指で押し出して稜線をつけています。
柔らかい為形が動き立体感のある稜線で、山から吹き下ろす風が工房付近で舞う様子を表現しました。
炭化線象嵌鎬陶筥「さざ波」(タンカ センゾウガン シノギ トウハコ 「サザナミ」)【福吉 浩一】熊本県
直方体の形態をした陶筥で、上面、側面、内側底面に鎬削りの後、白から濃い青色の色土を線象嵌した作品です。
表現したかったのは、海面や湖面の波の動きです。
線の象嵌に鎬を加える事で見る角度で複雑な波の表情が表せないかと考え、この作品の形態と技法にしました。
釉象嵌鉢(ユウゾウガンハチ)【中尾 純】佐賀県
茶に想う(チャニオモウ)【宮島 正志】東京都
“Subtleties”(サトルティーズ)【Johanna De Maine】佐賀県
WAVE Ⅱ(ウェーブ ニ)【丸田 巧】福岡県
彩色象嵌花器(サイショクゾウガンカキ)【中尾 恭純】佐賀県
萌芽の記憶(ホウガノキオク)【浦郷 正一郎】佐賀県
愛欲(アイヨク)【谷口 瑛梨】佐賀県
連作 涅槃(レンサク ネハン)【嶋田 敏生】佐賀県
赤彩線文花器(セキサイセンモンカキ)【國定 克彦】京都府
白妙彩磁壷(シロタエサイジツボ)【庄村 久喜】佐賀県
紅白鮮斜陽 -2203-(コウハクセン シャヨウ フタフタマルサン)【増原 嘉央理】北海道
彩色化粧波線刻文花器(サイショクケショウナミセンコクモンカキ)【上田 敦之】山口県
美術工芸品・オブジェ部門(こちらよりダウンロードできます。)
2022.4.7
第118回 有田国際陶磁展
美術工芸品・オブジェ部門 審査評
審査員長 徳留大輔
2022年、わたしたちの日常を揺るがす紛争や地震、そしてコロナ禍といった、心を傷める出来事、そして閉塞感が漂っている今日。少しでも日常をとりもどし、また心や生活を豊かにしてくれる芸術活動の一翼をになう、第118回有田国際陶磁展が開催されますことに、感謝とお慶びを申し上げます。
今回の出品点数は前回より20点減少こそしたものの、様々な創造・視点による作品80点がエントリーされました。審査員は石橋裕史さん、桑原紀子さんと徳留の3名。一次審査で入選作品67点を、二次審査で入賞候補作品17点を選定し、合議の上で14点の入賞作品を決定しました。
第一席の文部科学大臣賞を受賞された岡田優さんの《白釉稜線浅鉢》。口径50cmをこえる大振りの鉢で、失透性のあるクリーム色の釉薬が全体に柔らかい表情を生み出しています。一方で、器の外側から内側へつづく稜線、またその間をつなぐエッジの効いた口づくりが、作品全体にほどよい緊張感をもたらしています。この作品は横、上、斜めと色々な角度から見ていただき、表情の変化も楽しんでいただけることも魅力です。
第二席の佐賀県知事賞を受賞された福吉浩一さんの《炭化線象嵌鎬陶筥「さざ波」》。こちらも長さ50cm近い非常におおきな作品。黒色の背景に象嵌により白から青へと徐々に色味を変化させながら、しかも微妙に線の太さをかえることで表された線文が、鎬削りにより生み出された複雑な形と非常によく調和する効果を生み出しています。蓋をあけると、内側にもリズミカルに配された線象嵌の美しさに思わず「ワァー」と、審査員一同驚きの声をあげてしまった作品です。
また有田町長賞を受賞された中尾純さんの《釉象嵌鉢》は、器の形そのものが緩やかに波打つように仕上げられたフォルムと釉象嵌による文様が連動し、また白磁の美しさとも相まって端正かつ気品溢れる作品です。佐賀県陶芸協会賞の宮島正志さんの《茶に想う》は、確かな技術力をもとに生み出されたフォルムに、愛らしい色彩とデザインが現代的かつかた肩の力をぬいて茶の湯を楽しめそうな雰囲気にさせてくれる作品です。
今回惜しくも入選されなかった作品も含め、作り手の思いやその表現の形態、方向性は無限で非常に多様であり、それが見るひと、使うがわに感動を与えてくれる、またそれが陶芸の魅力であることを再認識させてくれる機会となりました。ぜひ、一人でも多くの方に本展覧会に足を運んでいただき、作品を見て楽しんでいただきたいと思います。